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円形脱毛症

MEDICAL

円形脱毛症とは

円形脱毛症と聞いて、多くの方が「10円ハゲ」を思い浮かべるかもしれません。しかし、この病気は時に髪の毛全体、さらには全身の毛にまで影響が及ぶこともある、奥深い疾患です。突然現れる脱毛斑に、多くの方が驚き、不安を感じることでしょう。

このページでは、円形脱毛症とはどのような病気なのか、なぜ起こるのか、そしてどのような治療法があるのかについて、最新の医学的知見に基づき、できるだけ分かりやすく解説していきます。当院の治療方針や、日常生活で気をつけるべき点などもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みいただき、円形脱毛症への理解を深め、ご自身の状況と照らし合わせてみてください。

遥か昔から知られていた?円形脱毛症の歴史

円形脱毛症は、現代特有の病気ではありません。実は、その歴史は古く、人類は遥か昔からこの症状に悩まされてきました。記録に残る最も古い記述の一つは、古代ローマの著述家ケルズス(Aulus Cornelius Celsus)によるものです。西暦30年頃、彼は頭部に斑状に毛が抜ける症状(”area celsi”)や、蛇が這ったような帯状の脱毛(”ophiasis”)について記録しています。この「ophiasis」は、現代でも円形脱毛症の病型の一つ「蛇行状」として知られています。

一方、日本では平安時代に、円形脱毛症は「鬼が舐めた痕」と考えられ、「鬼舐頭(きしとう)」と呼ばれていたそうです。原因が分からなかった時代、人々はこの突然の脱毛を、目に見えない存在の仕業として恐れていたのかもしれません。

このように、地域や時代によって様々な捉え方をされてきた円形脱毛症ですが、科学の進歩により、その原因は超自然的なものでも、単なる感染症でもないことが明らかになってきました。今日では、自身の免疫システムが関与する「自己免疫疾患」の一つとして理解されています。歴史を紐解くことで、この病気が決して特殊なものではなく、長い間人類が向き合ってきたものであること、そして現代の医学がその理解と治療を着実に進歩させていることを感じていただければ幸いです。

円形脱毛症の概要:体からのSOS?

円形脱毛症(Alopecia Areata: AA)は、体自身の免疫システムが、何らかの理由で自分の毛包(毛を作り出す組織)を「異物」と間違えて攻撃してしまう自己免疫疾患です。重要なのは、この病気は人にうつるものではなく、多くの場合、毛包自体が破壊されるわけではない(非瘢痕性)ため、毛髪が再生する可能性が残されている点です。

典型的な症状は、ある日突然、コインのような円形または楕円形の脱毛斑が現れることです。多くは頭皮にできますが、髭、眉毛、まつ毛、さらには腕や脚の毛など、毛が生えている場所ならどこにでも起こりえます。一般的に「10円ハゲ」と呼ばれるのは、この典型的な単発型の脱毛斑を指しますが、実際には複数の脱毛斑ができたり、広範囲に広がったりすることもあります。

この病気は決して珍しいものではありません。生涯のうちに人口の約1~2%の人が経験すると言われています。近年、アメリカや韓国、そして日本を含むいくつかの国で、円形脱毛症と診断される人の割合が増加傾向にあるという報告もあります。日本のデータでは、医療機関を受診した人の有病率は2012年の0.16%から2019年には0.27%に増加しています。診断を受けていない軽症例を含めると、実際の有病率はもっと高い可能性(2%以上)も指摘されています。この有病率の増加が、診断技術の向上によるものなのか、生活環境の変化などが影響しているのかはまだ明らかではありませんが、円形脱毛症が現代社会において無視できない皮膚疾患であることを示唆しています。また、受診に至らない方が一定数いる可能性は、正しい情報提供と受診勧奨の重要性を物語っています。

髪の毛のサイクルと円形脱毛症の関係

私たちの髪の毛は、常に「生えては抜ける」を繰り返しています。これを「毛周期」と呼びます。毛周期は大きく3つの段階に分けられます。

成長期(Anagen)

毛が活発に成長する期間。頭髪の場合、数年間続きます。

退行期(Catagen)

毛の成長が止まり、毛包が縮小し始める短い期間。数週間程度です。

休止期(Telogen)

毛包が活動を休止し、毛が抜け落ちる準備をする期間。数ヶ月続きます。


円形脱毛症は、この毛周期の中でも、主に成長期(Anagen)の毛包に影響を与えます。免疫細胞が成長期の毛球部(毛根の膨らんだ部分)を取り囲んで炎症を起こし、毛の成長を妨げます。これにより、毛は正常な成長を続けられなくなり、prematurely(時期尚早に)退行期や休止期へと移行し、結果として抜け落ちてしまうのです。毛包自体は残っているため、炎症が治まれば再び成長期に入り、毛が再生する可能性があるのです。

なぜ皮膚科なのか?

「髪の毛が抜けただけだから、皮膚科に行かなくても…」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、脱毛症の診断と治療において、皮膚科専門医の役割は非常に重要です。

正確な診断の重要性:見た目だけでは分からないことも

円形脱毛症の特徴である「円形の脱毛斑」は、一見分かりやすいように思えます。しかし、実は脱毛を引き起こす病気は数多く存在し、中には円形脱毛症とよく似た症状を示すものもあります。

例えば、お子さんによく見られる頭部白癬(とうぶはくせん)は、カビ(真菌)の一種が原因の感染症で、円形に近い脱毛斑を作ることがあります。また、自分で無意識に毛を抜いてしまう抜毛症(ばつもうしょう、トリコチロマニア)も、不規則な形の脱毛斑を生じます。他にも、男性・女性型脱毛症(AGA/FAGA)、膠原病に伴う脱毛、梅毒による脱毛など、様々な原因が考えられます(詳しくは後述の「よく似た症状の別の病気」をご参照ください)。

これらの病気は、それぞれ原因が全く異なるため、治療法も大きく異なります。例えば、頭部白癬には抗真菌薬が必要ですが、円形脱毛症の治療薬は効きません。逆に、円形脱毛症に用いられるステロイド薬を頭部白癬に使うと、症状が悪化することさえあります。抜毛症の場合は、皮膚科的な治療だけでなく、心理的なアプローチが必要になることもあります。

このように、正確な診断が、適切な治療への第一歩となります。自己判断や誤った治療は、症状の悪化や治療の遅れにつながる可能性があるため、専門家による診断が不可欠なのです。

皮膚科専門医の役割:専門知識とツールで原因を特定

皮膚科医は、皮膚・毛髪・爪の疾患を専門とする医師です。脱毛症に関しても、その種類を見分け、原因を特定するための専門的な知識と経験を持っています。

皮膚科では、以下のような診察や検査を通じて、正確な診断を目指します。

詳しい問診と視診・触診

いつから、どのように脱毛が始まったか、脱毛斑の形や範囲、頭皮の状態(赤み、かさつき、硬さなど)、他の症状の有無、ご家族に同様の症状の方がいるか、既往歴などを詳しくお伺いし、丁寧に観察します。活動期の円形脱毛症では、脱毛斑を触るとチクチクとした短い毛の感触があることもあります。

ダーモスコピー(トリコスコピー)

これは、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を使って、頭皮や毛髪の状態を詳しく観察する検査です。痛みもなく、簡単に行えます。円形脱毛症の場合、特徴的な所見が見られることがあります。

感嘆符毛(かんたんふもう)

毛の根元が細く、先端に向かって太くなっている、まるで「!」マークのような短い毛。活動性の高い時期に見られます。

 黒点(こくてん)

毛穴の中で毛が折れて黒い点のように見えるもの。これも活動性の指標です。

黄色点(おうしょくてん)

毛穴に皮脂や角質が詰まって黄色っぽく見えるもの。

その他

短く切れた毛(断裂毛)、細く短い産毛のような毛(短軟毛)など。これらの所見の有無や組み合わせを見ることで、円形脱毛症の診断の確度を高め、病気の活動性(勢い)を評価するのに役立ちます。

ヘアプルテスト(毛髪牽引試験)

脱毛部の周辺の毛を数十本、指で軽く引っ張ってみる検査です。活動期の円形脱毛症では、毛が簡単に抜けやすくなっています(通常6本以上抜けると陽性)。

血液検査

円形脱毛症の診断自体には必須ではありませんが、甲状腺疾患や膠原病などの自己免疫疾患の合併が疑われる場合や、鉄欠乏など他の脱毛原因を除外するために行うことがあります。

皮膚生検

診断が難しい場合や、他の脱毛症(特に瘢痕性脱毛症)との鑑別が必要な場合に、局所麻酔をして脱毛部の皮膚を小さく採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。活動期の円形脱毛症では、毛包周囲にリンパ球が集まっている特徴的な像(swarmofbees)が見られます。


これらの診察・検査を組み合わせることで、皮膚科医は脱毛の原因を正確に突き止め、最適な治療方針を立てることができるのです。

他の診療科との違い

脱毛の悩みで、最初に内科やかかりつけ医、お子さんの場合は小児科を受診される方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、それらの診療科でも脱毛に気づき、初期対応をすることは可能です。

しかし、前述の通り、脱毛症には様々な種類があり、正確な診断には専門的な知識と、ダーモスコピーのような特殊な診断ツールが不可欠です。皮膚科医は、これらのツールを駆使し、微細な頭皮や毛髪の変化を見極める訓練を受けています。例えば、ダーモスコピーで頭部白癬に特徴的な所見を見つければ、適切な抗真菌薬治療へ繋げることができます。抜毛症が疑われれば、皮膚科的な側面からのアドバイスと共に、必要に応じて心療内科などへの連携も考慮します。

内科や小児科では、全身的な疾患(甲状腺疾患や栄養障害など)が脱毛の原因として疑われる場合の検査は可能ですが、皮膚自体の病変や毛髪固有の変化を詳細に評価し、多様な脱毛症を鑑別診断することは、皮膚科の専門領域となります。

つまり、脱毛症の原因を正確に特定し、的確な治療方針を立てるためには、皮膚科専門医の診察を受けることが最も確実な方法と言えるでしょう。診断の遅れや誤診を防ぎ、効果的な治療を早期に開始するためにも、脱毛に気づいたら、まずは皮膚科にご相談ください。

当院での治療アプローチ

当院は、地域に根ざしたクリニックとして、患者様お一人おひとりの満足度を第一に考え、丁寧な診療を心がけております。円形脱毛症の患者様に対しても、その不安なお気持ちに寄り添いながら、最新の知見に基づいた最適な治療を提供できるよう努めています。

患者様第一の姿勢とコミュニケーション

円形脱毛症は、見た目に影響が出るため、患者様の心理的な負担が大きい疾患です。当院では、まず患者様のお話をじっくりと伺い、脱毛の状況だけでなく、それが日常生活や精神面にどのような影響を与えているかを理解することから始めます。治療の選択肢についても、それぞれのメリット・デメリット、期待できる効果、期間などを分かりやすくご説明し、患者様ご自身が納得して治療に臨めるよう、インフォームド・コンセント(説明と同意)を重視しています。

正確な診断へのこだわり

適切な治療は、正確な診断から始まります。当院では、丁寧な問診・視診・触診に加え、ダーモスコピーを用いて頭皮と毛髪の状態を詳細に観察します。これにより、円形脱毛症であるかの確認はもちろん、病気の活動性(勢い)を評価し、治療方針を決定するための重要な情報を得ます。必要に応じて、血液検査や、他の医療機関と連携して皮膚生検を行うこともあります。

地域性を踏まえた個別化治療

円形脱毛症の治療は、画一的ではありません。患者様の年齢、脱毛の範囲や重症度(S分類やSALTスコアなどで評価します)、病気の活動性(急に広がっている時期か、落ち着いている時期か)、合併している他の病気の有無、そして患者様のライフスタイルやご希望などを総合的に考慮し、オーダーメイドの治療計画を立てます。

当院では、日本皮膚科学会の診療ガイドラインに基づいた標準的な治療法を提供しています。

ステロイド外用薬

軽症から中等症の脱毛斑に対する基本的な治療です。

ステロイド局所注射

成人の限局した脱毛斑に効果的な治療ですが、痛みを伴うため、特にお子様への適応は慎重に判断します。


これらに加え、当院では以下の治療も選択肢としてご用意しています。

 エキシマライト

  • これは、特定の波長の紫外線を患部に照射する光線療法の一種です。ガイドラインでも、限局した円形脱毛症に対する治療選択肢の一
    つとして挙げられています。
  • 当院では、このエキシマライトを導入しており、脱毛斑にピンポイントで光を当てることができます。注射が苦手な方や、ステロイド外用薬の効果が不十分な場合に、良い適応となることがあります。週に1~2回程度の通院が必要となります。

また、重症の円形脱毛症に対する治療法についても、情報提供と適切な対応を行います。

局所免疫療法(SADBE、DPCP)

  • これは、特殊な化学物質を塗布して、意図的に軽いかぶれ(接触皮膚炎)を起こすことで、発毛を促す治療法です。広範囲の脱毛症に
    有効な場合がありますが、保険適用外であり、かぶれやかゆみなどの管理が必要です。
  • 試薬の管理・調製の観点から、当院では実施しておりませんが、適応があると判断される場合には、治療を行っている専門施設へ責任
    をもってご紹介いたします。

 JAK(ジャック)阻害薬(内服薬)

  • 近年登場した新しいタイプの飲み薬で、バリシチニブ(オルミエント®)とリトレシチニブ(リットフーロ®)が日本でも承認されています。これらは、円形脱毛症の原因となる免疫の異常な働きを抑えることで、高い発毛効果が期待されています。
  • ただし、これらの薬剤は「脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合」に限られ、使用には厳格な基準があります。また、感染症などの副作用のリスク管理のため、定期的な検査と専門医による慎重な管理が必要です。
  •  当院では、これらの薬剤の適応となる患者様に対して、治療のメリット・デメリットを十分に説明し、ご希望や状況に応じて、大学病院などの専門施設と連携しながら治療を進めるか、あるいはご紹介することを検討します。

患者指導と心のケア

治療と並行して、病気についての正しい理解を深めていただくこと、そして日常生活での注意点などについてもお伝えします。円形脱毛症は、時に長期的な経過をたどることもあり、精神的なサポートも重要です。ウィッグやカバーメイクなどの整容的な工夫に関するアドバイスや、必要に応じて患者会などの情報提供も行い、患者様が前向きに治療に取り組めるよう支援します。

 

具体的な症状と年齢別の特徴

円形脱毛症の症状は、脱毛斑の数や広がり方、現れる場所によって様々です。また、年齢によっても現れ方や経過に特徴が見られます。

脱毛斑の多様性:いろいろな「抜け方」

円形脱毛症の最も典型的な症状は、境界がはっきりした円形や楕円形の脱毛斑で、脱毛部の地肌は通常、赤みやフケなどもなく滑らかに見えます。しかし、その現れ方は一様ではありません。脱毛のパターンによって、いくつかの病型(びょうけい)に分類されます。

単発型(たんぱつがた)

  •  脱毛斑が1つだけ現れるタイプ。最も多く見られます。
  • 自然に治ることも比較的多いですが、油断は禁物です。

多発型(たはつがた)

  • 脱毛斑が2つ以上、複数現れるタイプ。
  • 時に脱毛斑同士がくっついて、より大きな不規則な形の脱毛斑になることもあります。

蛇行状(だこうじょう、Ophiasis オフィアシス)

  • 後頭部から側頭部にかけて、髪の生え際に沿って帯状に脱毛するタイプ。
  •  蛇が這ったような形に見えることからこの名前がつきました。
  • お子さんに見られることが多く、一般的に治りにくいタイプとされています。
  • 稀に、これとは逆に生え際が残り、頭頂部などが帯状に抜ける「逆蛇行状(Sisaipho シサイフォ)」というパターンもあります。

全頭型(ぜんとうがた、Alopecia Totalis)

  •  頭部の毛髪が、ほぼ全て抜け落ちてしまうタイプ。
  • 重症型とされます。

汎発型(はんぱつがた、Alopecia Universalis)

  • 頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、ひげ、脇毛、陰毛など、全身の毛が抜け落ちてしまうタイプ。
  •  最も重症なタイプです。

びまん性(びまんせい、Diffuse Alopecia Areata)

  • はっきりとした円形の脱毛斑ではなく、頭部全体、あるいは一部が広範囲に薄くなるタイプ。
  • 他のタイプの脱毛症(例:休止期脱毛症、女性型脱毛症)との区別がつきにくいことがあります。

活動性のサイン:病気の「勢い」を見極める

円形脱毛症が活発に進行している時期(急性期)には、特徴的なサインが見られることがあります。これらは、ダーモスコピー検査でより詳しく確認できます。

感嘆符毛(!マーク毛)

脱毛斑の境界付近に見られる、根元が細く、毛先に向かって太くなっている短い毛。毛根部で毛の形成が障害されていることを示唆します。

黒点(ブラックドット)

毛が毛穴のすぐ上で折れてしまい、黒い点のように見えるもの。

断裂毛(切れ毛)

途中で切れた短い毛。

陽性の毛髪牽引試験(ヘアプルテスト)

脱毛斑の周りの毛を軽く引っ張ると、容易に数本抜ける状態。


これらのサインが見られる場合は、脱毛がまだ進行中である可能性が高いと考えられます。逆に、これらのサインがなくなり、細く短い産毛(短軟毛)が生えてくると、回復期に入っている可能性があります。

爪の変化:髪だけじゃないサイン

意外に思われるかもしれませんが、円形脱毛症では爪にも変化が現れることがあります。報告によって差はありますが、患者さんの10~40%程度に見られるとされ、特に症状が重い場合や長引いている場合に合併しやすい傾向があります。

主な爪の変化には、以下のようなものがあります。

点状陥凹(てんじょうかんおう)

爪の表面に、針で刺したような小さな凹みが多数できる。

爪甲縦条(そうこうじゅうじょう)

爪に縦方向の筋(リッジ)が入る。

粗面爪(そめんそう、トラキオニキア)

爪全体がザラザラと粗くなり、光沢が失われる。サンドペーパーで擦ったような見た目。

 その他

スプーン状爪(爪が反り返る)、爪甲剥離(爪が先端から剥がれる)、爪甲脱落(爪が根元から抜け落ちる)、爪半月(爪の根元の白い部分)の赤色斑点など。


これらの爪の変化は、円形脱毛症の診断の手がかりになったり、重症度の指標になったりすることがあります。

年齢別の特徴:子供と大人で違うこと

円形脱毛症は、生まれたばかりの赤ちゃんからお年寄りまで、あらゆる年齢層で発症する可能性があります。しかし、発症しやすい年齢や、年齢によって症状の現れ方、経過、合併しやすい病気などに違いが見られます。

発症年齢のピーク

全体としては、比較的若い世代での発症が多く、患者さんの約4分の1は15歳以下で発症し、20歳までに発症する人が約60%、40歳までに発症する人が80%以上を占めるという報告があります。特に20代から30代にかけて発症のピークが見られることが多いようです。男女差については、発症率自体に大きな差はないとされていますが、女性の方が平均発症年齢がやや高いというデータもあります。

小児(子供)の場合

予後

一般的に、発症年齢が低いほど(特に思春期前や10歳未満)、症状が重症化(全頭型、汎発型など)しやすく、治りにくく、再発しやすい傾向があります。蛇行状のパターンも子供に比較的多く見られます。

合併症

アトピー性皮膚炎の合併率が高いことが特徴です。

治療

治療法の選択肢が成人よりも限られることがあります。例えば、ステロイドの局所注射は痛みのため、またステロイドの内服やパルス療法は副作用のリスクから、基本的には推奨されていません。光線療法も長期的な安全性が確立されていません。ただし、新しいJAK阻害薬の一つであるリトレシチニブ(リットフーロ®)は12歳以上の小児・思春期にも適応があります。

心理的影響

学校生活や友人関係の中で、見た目の変化が大きなストレスとなり、いじめや不登校につながる可能性も指摘されており、周囲の理解とサポートが特に重要です。

成人の場合

合併症

子供に比べて、甲状腺疾患(橋本病など)や、尋常性白斑、関節リウマチといった他の自己免疫疾患を合併する頻度が高い傾向があります。

治療

ステロイド外用・局注、光線療法、局所免疫療法、そして重症例に対するJAK阻害薬など、幅広い治療選択肢があります。このように、発症した年齢によって、病気の経過や治療方針が異なる可能性があることを理解しておくことが大切です。特に若年で発症した場合は、より根気強い治療とケアが必要になることがあります。


このように、発症した年齢によって、病気の経過や治療方針が異なる可能性があることを理解しておくことが大切です。特に若年で発症した場合は、より根気強い治療とケアが必要になることがあります。

なぜ円形脱毛症になるのか?

円形脱毛症がなぜ起こるのか、その正確なメカニズムはまだ完全には解明されていません。しかし、近年の研究により、いくつかの要因が複雑に関与していることが分かってきました。

自己免疫疾患としての側面:体が自分を攻撃してしまう?

現在、最も有力視されている原因は「自己免疫」の異常です。私たちの体には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守るための「免疫」というシステムが備わっています。ところが、何らかのきっかけでこの免疫システムが誤作動を起こし、自分自身の正常な組織や細胞を攻撃してしまうことがあります。これが自己免疫疾患です。

円形脱毛症の場合、免疫細胞(特にTリンパ球と呼ばれる細胞)が、成長期にある毛包の毛球部を「異物」と認識して攻撃を仕掛けます。毛包は本来、免疫系の攻撃を受けにくい「免疫特権」と呼ばれる性質を持っていますが、円形脱毛症ではこの特権が破綻してしまうと考えられています。攻撃を受けた毛包は炎症を起こし、正常な毛髪を作れなくなり、結果として毛が抜け落ちてしまうのです。まるで、自分の体を守るはずの兵士(免疫細胞)が、勘違いして自国の施設(毛包)を攻撃してしまうような状態と言えるかもしれません。

遺伝的素因:なりやすい体質はある?

円形脱毛症の発症には、遺伝的な要因が関わっていると考えられています。

実際に、円形脱毛症の患者さんの8~20%程度に、血縁者にも同じ病気の方がいるという報告があります。親子や兄弟など、血縁関係が近いほど発症率が高くなる傾向があり、ある調査では、第一度近親者(親子、兄弟姉妹)の発症リスクは、一般の人に比べて10倍にもなるとされています。一卵性双生児(遺伝子がほぼ同じ)が二人とも発症する確率が高いのに対し、二卵性双生児では低いという研究結果も、遺伝的要因の関与を裏付けています。

これまでの研究で、免疫系の働きに関わる遺伝子(HLA遺伝子など)や、炎症に関わる遺伝子(サイトカイン関連遺伝子)、毛包の構造に関わる遺伝子(CCHCR1遺伝子など)の中に、円形脱毛症になりやすさと関連する特定のタイプ(遺伝子多型)が見つかっています。

ただし、重要なのは、これらの遺伝子を持っていれば必ず発症するというわけではない、ということです。円形脱毛症は、単一の遺伝子で決まる病気ではなく、複数の遺伝子が関与する多因子遺伝疾患と考えられています。つまり、遺伝子はあくまで「なりやすさ(素因)」に関わるものであり、発症には後述するような他の要因(環境因子など)が引き金として必要だと考えられています。遺伝的な素因は、いわば「火薬」のようなもので、それに「火をつける」何らかのきっかけがあって初めて発症に至る、というイメージです。ですから、ご自身が円形脱毛症だからといって、お子さんも必ずなるとは限りません。

アトピー素因:アレルギー体質との関連

アトピー素因とは、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎(花粉症など)、アレルギー性結膜炎といったアレルギー性の病気(アトピー性疾患)になりやすい体質のことを指します。

円形脱毛症の患者さんには、このアトピー素因を持つ人が多いことが知られています。報告によりますが、患者さんの10~40%以上が、本人または家族にアトピー性疾患の既往があるとされています。特に、小児期に発症した円形脱毛症では、アトピー性皮膚炎を合併している割合が高いことが指摘されています。また、アトピー素因があると、円形脱毛症が重症化しやすい、あるいは治りにくい傾向があるとも言われています。

円形脱毛症は主に「Th1」というタイプの免疫反応が、アトピー性疾患は主に「Th2」というタイプの免疫反応が関与すると考えられてきました。この二つが合併しやすいという事実は、円形脱毛症の背景には、単純ではない複雑な免疫バランスの乱れが存在することを示唆しています。この関連性の解明は、今後の治療法開発にも繋がる可能性があります。

遺伝的な素因やアトピー素因を持つ人が、必ずしも円形脱毛症を発症するわけではありません。発症には、何らかの「きっかけ(誘因・環境因子)」が加わることが多いと考えられています。

精神的・身体的ストレス

  • 「ストレスで髪が抜けた」という話をよく聞くように、精神的なショックや過労、睡眠不足、あるいは病気や怪我、手術といった身体的なストレスが、円形脱毛症の引き金になることがあると考えられています。
  • ただし、ストレスと円形脱毛症の直接的な因果関係を科学的に証明することは難しく、実際には明らかなストレスがないのに発症する人も少なくありません。
  • ストレスが、免疫系やホルモンバランス、あるいは頭皮への血流などに影響を与え、元々あった素因を持つ人において、発症の「スイッチ」を押してしまう可能性が考えられます。

感染症

ウイルス感染(風邪など)や細菌感染が、免疫系を刺激し、誤作動を引き起こすきっかけになる可能性も指摘されています。

その他の要因

出産後のホルモンバランスの変化、薬剤、ワクチン接種、栄養障害(特に鉄欠乏など)、外傷などが、発症に関与したとされる報告もあります。また、体内の酸化ストレス(活性酸素によるダメージ)との関連も研究されています。

 腸内環境(腸内フローラ)

近年、注目されているのが「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と免疫系の関係です。私たちの腸内には数百兆個もの細菌が生息しており、そのバランスが全身の健康、特に免疫機能に大きな影響を与えることが分かってきました。

  • いくつかの研究で、円形脱毛症の患者さんでは、健康な人と比べて腸内細菌の種類やバランスに違い(ディスバイオシス)が見られることが報告されています。例えば、特定の菌(Firmicutes属やProteobacteria属など)が増加し、有用菌とされる菌(Bifidobacterium属など)が減少している、といった報告があります。
  • 腸内環境の乱れが、免疫系の異常を引き起こし、円形脱毛症の発症や悪化に関与しているのではないか、という仮説が立てられています。
  • この分野はまだ研究が始まったばかりであり、腸内環境を整えることが直接的な治療法になるかは今後の検証が必要ですが、円形脱毛症の原因を多角的に理解する上で、非常に興味深い視点と言えます。

このように、円形脱毛症は、遺伝的な「なりやすさ」を背景に、免疫系の誤作動が起こり、そこにストレスや感染症、あるいは腸内環境の変化といった様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。一つの原因で説明できる単純な病気ではない、ということをご理解いただければと思います。

治療法:発毛へのアプローチ

円形脱毛症の治療目標は、毛包への免疫攻撃を抑え、毛髪の再生を促すことです。どの治療法を選択するかは、患者さんの年齢、脱毛の範囲と重症度(S分類やSALTスコアなどで評価)、病気の活動性(脱毛が進行しているか、落ち着いているか)、発症からの期間などを考慮して、個別に決定されます。

円形脱毛症の経過は予測が難しく、治療効果には個人差があります。また、一度治っても再発する可能性があることも、この病気の特徴です。治療には根気が必要な場合もありますが、諦めずに主治医と相談しながら継続していくことが大切です。

なお、軽症の単発型や多発型の場合、特に他のリスク因子がない成人では、1年以内に自然に治癒することも少なくありません(報告によっては80%程度とも言われますが、再発も多いです)。しかし、治癒を早めたり、悪化を防いだり、あるいは精神的な負担を軽減したりするために、軽症であっても治療を検討する価値は十分にあります。

以下に、日本皮膚科学会の診療ガイドラインなどで推奨されている主な治療法をご紹介します。

主な治療法(ガイドラインに基づく)

ステロイド外用薬(塗り薬)

どんな治療?

脱毛斑に直接ステロイドの塗り薬(クリームやローション)を塗ることで、局所の炎症と免疫反応を抑えます。

どんな人に?

脱毛範囲が狭い軽症~中等症(単発型、多発型:S1)の場合の第一選択です。大人にも子供にも用いられます。

使い方

通常、1日1~2回、患部に塗布します。効果を高めるために、比較的強めのステロイド薬が選択されることが多いです。医師の指示によっては、塗った後にラップで覆う密封療法(ODT)を行うこともありますが、副作用のリスクも高まるため注意が必要です。

メリット

自宅で手軽にでき、痛みもありません。

デメリット

効果が現れるまでに数ヶ月かかることがあります。長期間使用すると、皮膚が薄くなる、ニキビのようなものができる、血管が浮き出るといった副作用の可能性があります。広範囲の脱毛には効果が限定的です。

ガイドライン推奨度

推奨度1(強く推奨する)、エビデンスレベルB(限局したAAに対して)。

ステロイド局所注射

どんな治療?

脱毛斑の皮膚内(真皮)に、直接ステロイド薬を注射します。

どんな人に?

限局した脱毛斑(単発型、多発型:S1)を持つ成人に適しています。外用薬の効果が不十分な場合や、より早い効果を期待する場合に選択されます。眉毛の脱毛にも用いられます。

使い方

脱毛斑内に、数ミリ~1cm間隔で少量ずつ注射します。通常、4~6週間に1回程度繰り返します。

 メリット

外用薬よりも、注射した部位の発毛効果が高いことが多いです。

デメリット

注射時に痛みを伴います。そのため、お子さんには基本的に行いません。注射部位の皮膚が一時的に凹む(萎縮)ことがありますが、多くは時間とともに回復します(注射手技で軽減可能)。内出血や痛みが起こることもあります。脱毛範囲が非常に広い場合には、現実的ではありません。

ガイドライン推奨度

推奨度1(強く推奨する)、エビデンスレベルB(限局した成人のAAに対して)。

紫外線療法(光線療法)

どんな治療?

特定の波長の紫外線を患部に照射することで、皮膚の免疫反応を調整し、発毛を促す治療法です。

種類と適応
  • エキシマライト…ターゲットを絞ってUVBを照射します。当院でもこの治療が可能です。主に限局した脱毛斑(単発型、多発型)に適しています。
  • ナローバンドUVB(NBUVB)…より広範囲にUVBを照射します。脱毛範囲がやや広い場合に考慮されることがあります。当院でも今後全身型紫外線装置を設置予定です。
  • PUVA(プーバ)療法…光感受性を高める薬(ソラレン)を塗布または内服した後にUVAを照射する古い方法です。主に広範囲(全頭型、汎発型)の成人に対して考慮されますが、副作用や手間から最近は行われることが減っています。当院では行っていません。
どんな人に?

ステロイド外用・局注の効果が不十分な場合や、注射が苦手な場合の選択肢となります。エキシマやNBUVBは比較的軽症~中等症、PUVAは重症例が対象です。

使い方

週に1~数回の通院が必要です。効果判定には数ヶ月~半年以上の期間を見ます。

メリット

注射のような痛みはありません。エキシマライトは病変部のみに照射できます。

 デメリット

頻回の通院が必要です。日焼けのような赤みやヒリヒリ感が出ることがあります。長期的には、紫外線による皮膚への影響(シミ、しわ、皮膚がんリスクの上昇)も考慮する必要がありますが、エキシマライトのようなターゲット照射ではリスクは低いと考えられます。効果には個人差があります。お子さんに対する長期的な安全性はまだ十分に確立されていません。

 ガイドライン推奨度

推奨度2(弱く推奨する)、エビデンスレベルB(PUVAは広範囲の成人、エキシマ/NBUVBは通常型の成人に対して行ってもよい)。治療開始後、半年~1年で効果を評価することが推奨されています。

局所免疫療法

どんな治療?

SADBEやDPCPといった特殊な化学物質を意図的に頭皮に塗り、軽いかぶれ(接触皮膚炎)を起こさせる治療法です。この人工的なかぶれが、毛包を攻撃している免疫反応を変化させ、発毛を促すと考えられています。

どんな人に?

脱毛範囲が広い(S2以上、全頭型、汎発型など)場合に推奨される治療法です。大人にも子供にも適応があります。他の治療で効果が見られない場合に試みられることが多いです。

使い方

まず感作(アレルギー反応を起こせる状態にする)させ、その後は週に1回~2週間に1回程度、ごく薄い濃度の試薬を患部に塗布します。軽いかゆみや赤みが続く程度に濃度を調整していきます。専門的な知識と経験、試薬の適切な管理が必要なため、実施できる医療機関は限られています。

メリット

広範囲の脱毛症に対して有効性が期待できる数少ない治療法の一つです。

デメリット

治療の性質上、かゆみや赤み、かぶれは必ず起こります(これが治療効果の指標にもなります)。時に、強いかぶれ、水ぶくれ、リンパ節の腫れ、全身への湿疹(自家感作性皮膚炎)、色素沈着などが起こる可能性があります。日本では保険適用外の治療です。

ガイドライン推奨度

推奨度2(弱く推奨する)、エビデンスレベルB(広範囲のAA(S2以上)に対して、患者・保護者の同意と施設承認のもと行ってもよい)。

JAK(ジャック)阻害薬(飲み薬)

どんな治療?

円形脱毛症の原因となる免疫の暴走に関わる「JAK(ヤヌスキナーゼ)」という酵素の働きをピンポイントで抑える、新しいタイプの飲み薬です。免疫細胞からの攻撃指令シグナルをブロックすることで、毛包への攻撃を止め、発毛を促します。円形脱毛症治療における大きな進歩とされています。

薬剤
  •  バリシチニブ(オルミエント®)…成人の重症円形脱毛症に適応があります。通常1日1回4mg、状態に応じて2mgに減量します。
  •  リトレシチニブ(リットフーロ®)…成人および12歳以上の小児の重症円形脱毛症に適応があります。1日1回50mgを服用します。JAK3/TECファミリーキナーゼを選択的に阻害します。
どんな人に?

脱毛範囲が広範囲(頭部の50%以上、SALTスコア≧50、あるいはS2以上で体毛にも脱毛がある場合など)で、かつ他の治療法で十分な効果が得られなかった難治性の患者さんが対象です。経験豊富な医師の管理下で使用されるべき薬剤です。

メリット

これまで治療が難しかった重症の円形脱毛症に対して、高い発毛効果が多くの患者さんで報告されています。飲み薬なので、通院回数が少なくて済む場合があります。

デメリット

免疫を抑える作用があるため、感染症(特に帯状疱疹、肺炎など)のリスクが高まります。そのため、治療開始前には結核やB型・C型肝炎などの感染症のチェックが必須で、治療中も定期的な血液検査(血球数、肝機能、コレステロール値など)によるモニタリングが必要です。その他、ニキビ、頭痛、吐き気、コレステロール値の上昇などの副作用が見られることがあります。まれに、血栓症、心血管イベント、悪性腫瘍のリスクも指摘されており(主に他の自己免疫疾患でのデータ)、慎重な患者選択と管理が求められます。薬価が高額になる場合があります。また、服用を中止すると再発する可能性が高いことも知られています。

ガイドライン推奨度

推奨度1(強く推奨する)、エビデンスレベルA(重症・難治性のAAに対して、専門医による管理、患者との十分な情報共有と同意のもとでのみ使用を推奨)。

その他の治療法

ミノキシジル外用薬(塗り薬)

主に男性型・女性型脱毛症に使われる薬で、血管拡張作用などにより発毛を促します。円形脱毛症の根本原因である自己免疫には作用しないため、単独での効果は限定的です。しかし、ステロイド治療などで炎症が抑えられた後に、発毛を後押しする目的で補助的に用いられることがあります。当院では自費診療になります。

ステロイド内服/パルス療法

急速に進行する広範囲の脱毛に対して、短期間、内服または点滴で大量のステロイドを投与する方法です。一時的に脱毛を抑える効果はありますが、中止後の再発が多く、また長期使用による全身性の副作用(糖尿病、高血圧、骨粗鬆症、感染症など)のリスクが大きいため、一般的には推奨されません。特にお子さんには避けるべきとされています。

 冷却療法

液体窒素などを脱毛部に当てて軽い炎症を起こす方法ですが、有効性に関する質の高い証拠は乏しいです。


このように、円形脱毛症の治療法は多岐にわたります。どの治療法が最適かは、一人ひとりの状態によって異なります。「この治療法が絶対に効く」というものはなく、効果を見ながら治療法を変更したり、組み合わせたりすることもあります。皮膚科医とよく相談し、ご自身に合った治療法を見つけていくことが重要です。

日常生活で気をつけるポイント

円形脱毛症の治療と並行して、日常生活の中で少し気をつけることで、頭皮環境を整え、心身のバランスを保ち、治療効果を高めたり、再発を予防したりすることにつながる可能性があります。

頭皮ケアと保護:優しく、守る

優しい洗髪

洗浄力の強すぎるシャンプーは避け、低刺激性のものを選びましょう。洗髪時は爪を立てず、指の腹で優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないように丁寧に洗い流します。洗髪後は、タオルでゴシゴシ擦らず、優しく押さえるように水分を拭き取り、ドライヤーで適度に乾かしましょう。

紫外線対策

脱毛している部分の頭皮は、日光(紫外線)に対して非常に無防備です。日焼けは炎症を引き起こし、発毛の妨げになる可能性もあります。外出時には、帽子やスカーフ、バンダナなどで頭皮を保護しましょう。特に、ここ新潟県のように自然が豊かで、アウトドアを楽しむ機会が多い地域では、屋外での活動中の紫外線対策は重要です。通気性の良い、肌に優しい素材(綿やシルクなど)の帽子を選ぶと良いでしょう。

 刺激を避ける

ヘアカラーやパーマは、頭皮に刺激を与える可能性があります。特に脱毛が活発な時期や、髪が生え始めたばかりのデリケートな時期は、避けた方が無難です。ヘアスプレーなどの整髪料も、頭皮に直接つかないように注意しましょう。

ストレスマネジメント:心と体のバランスを整える

ストレスが円形脱毛症の直接的な原因とは断定できませんが、発症や悪化の引き金になる可能性は指摘されています。ストレスを完全になくすことは難しいですが、上手に付き合い、心身のバランスを整える工夫は大切です。

自然を活用する

豊かな自然に恵まれた新潟県ならではのリフレッシュ方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。

アウトドア活動

近隣の公園や緑道を散歩したり、軽いハイキングを楽しんだりするのも良いでしょう。自然の中に身を置くことは、心を落ち着かせる効果があると言われています。無理のない範囲で、心地よいと感じる活動を見つけてみてください。

自然観察を通じたマインドフルネス

当院院長は昆虫好きですが、例えば、道端の草花や、木々にとまる昆虫をじっくり観察してみるのも、一つの方法です。美しい蝶の翅の模様や、小さな甲虫の動きに意識を集中させる…それは、特別な道具もいらず、誰でもできる「マインドフルネス(今この瞬間に意識を向けること)」の実践です。日々の喧騒から離れ、目の前の小さな自然に心を向ける時間を持つことで、気分転換になり、心が穏やかになるかもしれません。

リラクゼーション法

深呼吸、瞑想、ヨガ、ストレッチ、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる、好きな音楽を聴く、読書をするなど、自分がリラックスできる方法を見つけ、日常生活に取り入れましょう。

質の高い睡眠

 睡眠不足はストレス耐性を低下させ、免疫機能にも影響を与えます。毎日なるべく同じ時間に寝起きする、寝る前のカフェインやスマートフォンの使用を控える、寝室を快適な環境に整えるなど、質の高い睡眠を確保することを心がけましょう。特に深夜まで起きている生活は、自律神経のバランスを乱しやすいため注意が必要です。

バランスの取れた食事:体の中から健やかに

食事が直接円形脱毛症を治すわけではありませんが、バランスの取れた食事は、全身の健康を維持し、免疫機能を正常に保ち、健やかな髪の成長をサポートするために重要です。特に意識したい栄養素と、それらを多く含む食品の例を挙げます。

表:健やかな髪と体に必要な主な栄養素と食品例

栄養素 主な働き 多く含む食品例
タンパク質 髪の主成分「ケラチン」の材料となる 肉、魚、卵、大豆製品(豆腐、納豆など)、乳製品
亜鉛 ケラチンの合成を助け、毛母細胞の増殖を促す。免疫機能にも関与。 牡蠣、レバー、牛肉(赤身)、ナッツ類、種子類(かぼちゃ等)
鉄分 ヘモグロビンの成分となり、頭皮への酸素供給を助ける。不足は脱毛の原因にも。 レバー、赤身肉、ほうれん草、小松菜、ひじき、あさり
ビタミンB群 エネルギー代謝を助け、皮膚や粘膜の健康維持、細胞分裂に関わる。 豚肉、レバー、うなぎ、玄米、納豆、ナッツ類、緑黄色野菜
ビタミンC コラーゲンの生成を助け、頭皮の健康維持。鉄分の吸収を高める。抗酸化作用も。 果物(柑橘類、いちご、キウイ等)、野菜(ピーマン、ブロッコリー等)、いも類
ビタミンE 血行を促進し、頭皮環境を整える。強い抗酸化作用を持つ。 ナッツ類(アーモンド等)、植物v油、アボカド、かぼちゃ
ビタミンD 免疫機能の調節に関与。不足と自己免疫疾患との関連も指摘。 魚(鮭、さんま等)、きのこ類(特にきくらげ、干し椎茸)、卵

特定の食品だけを偏って食べるのではなく、様々な食品をバランス良く組み合わせることが大切です。極端なダイエットや偏食は避けましょう。

整容的な工夫:見た目の悩みをカバーする

脱毛斑が気になる場合、以下のような工夫で見た目をカバーし、QOL(生活の質)を維持・向上させることができます。

ヘアスタイル

脱毛の場所や範囲に応じて、髪型を工夫する(例:オールバック、結ぶ位置を変えるなど)。

帽子、スカーフ、バンダナ

おしゃれなアイテムとして取り入れる。肌触りの良い素材を選びましょう。

ウィッグ(かつら)、ヘアピース(部分かつら)

自然な見た目のものが増えています。当院では医療用ウィッグを専門に扱うお店をご紹介いたします。気分転換に、普段と違う髪型を楽しむこともできます。

眉毛・まつ毛メイク

眉毛やまつ毛が抜けてしまった場合、アイブロウペンシルやパウダー、アイライナーなどで補うことができます。専用のテンプレートや、アートメイク、付けまつ毛なども選択肢になります。


これらの工夫は、脱毛によるストレスを軽減し、自信を持って社会生活を送るための一助となります。

よくある質問(FAQ)

円形脱毛症に関して、患者様からよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。

  • 円形脱毛症は自然に治りますか?

    脱毛範囲が狭い軽症の円形脱毛症(単発型など)は、特に合併症のない成人の場合、1年以内に自然に治ることがあります。しかし、その経過は予測が難しく、治った後に再発することも珍しくありません。全頭型や汎発型、蛇行状といった広範囲に及ぶタイプは、自然治癒することは稀です。軽症であっても、症状が長引く場合や、精神的な負担が大きい場合には、皮膚科を受診し、治療について相談することをお勧めします。

  • 市販の育毛剤やシャンプーで治せますか?

    市販されている育毛剤の多く(ミノキシジル配合のものなど)は、主に男性型・女性型脱毛症(AGA/FAGA)を対象としており、円形脱毛症の根本原因である自己免疫の異常に直接働きかけるものではありません。ステロイド治療などで炎症が治まった後に、発毛を補助する目的で使われることはありますが、それだけで円形脱毛症を治すことは困難です。シャンプーも同様で、特別なシャンプーが自己免疫反応を抑えるわけではありません。ただし、頭皮を清潔に保ち、刺激の少ないシャンプーを選ぶことは、頭皮環境にとって良いことです。円形脱毛症の効果的な治療には、皮膚科で処方される、免疫反応を抑える治療が必要です。

  • いつ病院(皮膚科)を受診すべきですか?

    円形の脱毛斑に気づいたら、できるだけ早めに皮膚科を受診することをお勧めします。特に、脱毛斑が急速に広がっている、数が増えている、眉毛やまつ毛、体毛にも脱毛が見られる、といった場合は、早めの受診が望ましいです。早期に診断を受けることで、他の病気ではないことを確認でき、必要であれば適切な治療を早く始めることができます。それが結果的に、より良い治療効果につながる可能性があります。たとえ小さな脱毛斑一つであっても、「これくらいなら…」と放置せず、専門医に相談することで、正確な診断と適切なアドバイスを得られ、安心にもつながります。

  • 円形脱毛症は再発しますか?

    はい、残念ながら再発は比較的多い病気です。一度、髪の毛が完全に生えそろっても、数ヶ月後、あるいは数年後に再び脱毛斑が現れることがあります。再発のしやすさには個人差が大きく、予測は困難です。治療が終わった後も、定期的に皮膚科で経過を観察したり、再発の兆候が見られたら早めに受診したりすることで、再発時にも迅速に対応することができます。

  • 円形脱毛症は遺伝しますか?子供にうつりますか?

    円形脱毛症には遺伝的な「なりやすさ(素因)」が関与していると考えられています。実際に、患者さんのご家族にも同じ病気の方がいる割合は、一般の人よりも高いです(8~20%程度)。しかし、これは「必ず遺伝する」という意味ではありません。複数の遺伝子と環境要因が組み合わさって発症すると考えられており(多因子遺伝)、親が円形脱毛症でも、お子さんが発症しないケースの方がはるかに多いです。また、円形脱毛症は感染症ではないため、人にうつる(伝染する)ことは絶対にありません。ただし、頭部白癬や梅毒など、一部の感染症が原因となる脱毛症は他人にうつす可能性があります。

  • 治療にはどのくらいの期間がかかりますか?完治しますか?

    治療期間は、脱毛の重症度や治療法、そして個人差によって大きく異なります。一般的に、発毛が見られるまでには数ヶ月単位の時間が必要です(治療法によっては3~6ヶ月以上)。治療によって髪が生えそろっても、再発を防ぐために治療を継続する場合もあります。特にJAK阻害薬のような新しい治療法は、中止すると再発しやすいことが分かっています。残念ながら、現時点では円形脱毛症を「完治」させ、二度と再発しないようにする根本的な治療法は確立されていません。治療の目標は、自己免疫反応を抑えて発毛を促し、寛解(症状が落ち着いた状態)を維持すること、そして再発した場合に適切に対処することになります。軽症の方を中心に、長期的に寛解状態を維持できる方もいらっしゃいます。

  • 新しい飲み薬(JAK阻害薬)は誰でも使えますか?副作用が心配です。

    JAK阻害薬(バリシチニブ(オルミエント®)、リトレシチニブ(リットフーロ®))は、円形脱毛症治療の大きな進歩ですが、誰でも使えるわけではありません。これらの薬は、「脱毛範囲が広範囲に及ぶ難治の場合」、つまり、重症で、これまでの治療で効果がなかった患者さんに限定して使用が認められています。軽症の円形脱毛症に対する第一選択薬ではありません。使用にあたっては、経験豊富な医師による慎重な判断が必要です。治療開始前には、結核や肝炎ウイルスなどの感染症の有無を必ず確認し、治療中も定期的な血液検査などで副作用をチェックする必要があります。副作用としては、感染症(特に帯状疱疹など)、ニキビ、コレステロール値の上昇などが比較的よく見られます。まれですが、重篤な感染症、血栓症、心血管系のイベント、悪性腫瘍などのリスクも報告されているため、治療のメリットとリスクを十分に理解した上で、医師とよく相談して決定することが極めて重要です。

まとめ

円形脱毛症は、免疫系の誤作動によって起こる、決して珍しくない病気です。突然現れる脱毛斑に驚き、不安を感じるのは当然のことです。しかし、正しい知識を持ち、適切な対処を行うことで、多くの場合、改善が期待できます。この病気は、見た目の症状は似ていても、その広がり方や経過、合併する可能性のある他の病気、そして効果的な治療法が、一人ひとり異なります。だからこそ、皮膚科専門医による正確な診断と、個々の状態に合わせた治療計画が非常に重要になります。

当院では、患者様のお話を丁寧に伺い、ダーモスコピーなどの専門的な診察を通じて的確な診断を行うことを第一に考えています。そして、日本皮膚科学会のガイドラインに基づいた標準治療(ステロイド外用・局注、エキシマライトによる光線療法など)から、必要に応じて最新の治療法(JAK阻害薬など)に関する情報提供や専門施設への紹介まで、患者様にとって最善の選択肢を一緒に考え、治療を進めてまいります。

また、治療だけでなく、日常生活での注意点や、見た目の悩みをカバーする工夫、心のケアについても、親身になってアドバイスさせていただきます。

円形脱毛症かもしれない、あるいは脱毛に関するお悩みを抱えている方は、どうぞ一人で悩まず、まずは当院にご相談ください。専門的な知識と経験に基づき、皆様の不安を少しでも和らげ、健やかな髪と心を取り戻すためのお手伝いができれば幸いです。

最新のトピック:円形脱毛症研究の最前線

円形脱毛症の原因解明や治療法の開発は、現在も世界中で活発に進められています。ここでは、特に注目されている最新のトピックを3つご紹介します。

1. JAK阻害薬の長期的な有効性と安全性

近年登場したJAK阻害薬(バリシチニブ(オルミエント®)、リトレシチニブ(リットフーロ®))は、重症の円形脱毛症に対する治療に革命をもたらしました。臨床試験では、これまで治療が難しかった患者さんにも高い発毛効果が示されています。現在の大きな関心事は、これらの薬剤を長期間使用した場合の効果の持続性と安全性です。治療を中止すると再発しやすいことが分かっているため、長期間の継続投与が必要になるケースが多いと考えられます。関節リウマチなど他の自己免疫疾患の治療では、JAK阻害薬の長期使用に伴うまれな副作用(重篤な感染症、心血管イベント、悪性腫瘍、血栓症など)のリスクが指摘されています。円形脱毛症の患者さんにおける長期的なリスクについては、現在もデータの蓄積と解析が進められています。今後の研究により、より安全で効果的な使用法が確立されることが期待されます。

2. 小児の円形脱毛症治療の進歩

お子さんの円形脱毛症は、精神的な影響が大きいにもかかわらず、安全に使用できる治療選択肢が限られているという課題がありました。しかし、近年、この分野でも進歩が見られます。JAK阻害薬の一つであるリトレシチニブ(リットフーロ®)が12歳以上の小児・思春期の重症例に対して承認されたことは、大きな一歩です。さらに、他のJAK阻害薬(バリシチニブ(オルミエント®)やウパダシチニブなど)や、生物学的製剤(特定の免疫分子を標的とする注射薬)についても、小児の円形脱毛症に対する臨床試験が進行中です。また、お子さんの脱毛重症度をより正確に評価するためのツール開発も進んでいます。これらの研究が進むことで、将来的には、より安全で効果的な治療法が、より低年齢のお子さんにも提供できるようになることが期待されています。

3. 腸内フローラと円形脱毛症の関連研究

私たちの腸内に生息する膨大な数の細菌(腸内フローラ)が、全身の免疫システムに影響を与えていることが、近年の研究で明らかになっています。そして、円形脱毛症の患者さんでは、腸内フローラのバランスが健康な人と異なっている(ディスバイオシス)ことを示唆する研究結果がいくつか報告されています。特定の種類の細菌が多かったり、少なかったりすることが、免疫系の誤作動を引き起こし、円形脱毛症の発症や悪化に関与しているのではないか、という仮説が立てられています。まだ研究段階であり、腸内環境を整えることが直接的な治療法となるかは証明されていませんが、食事や生活習慣が免疫を介して円形脱毛症に影響を与える可能性を示唆するものであり、今後の展開が注目される分野です。将来的には、腸内フローラをターゲットとした新しい予防法や治療法が開発されるかもしれません。


これらの最新トピックは、円形脱毛症の理解と治療が日々進歩していることを示しています。当院でも、常に最新の情報を収集し、患者様へ還元できるよう努めてまいります。

 

よく似た症状の別の病気(鑑別疾患)

円形脱毛症と似たような脱毛症状を引き起こす病気は、実はたくさんあります。これらを正確に見分ける(鑑別する)ことが、適切な治療への第一歩です。以下に、円形脱毛症との鑑別が必要となる主な病気を挙げます。このリストの多様性が、皮膚科専門医による診断の重要性を示しています。

・頭部白癬(とうぶはくせん)

水虫と同じ白癬菌(カビ)による頭皮の感染症。フケや赤みを伴うことが多く、毛が途中で折れたり(黒点)、抜けたりする。特に子供に多い。

・抜毛症(ばつもうしょう、トリコチロマニア)

自分で無意識に毛髪を抜いてしまう癖。不規則な形の脱毛斑で、毛の長さがバラバラ。断裂毛が多い。

・男性型・女性型脱毛症(AGA/FAGA)

男性ホルモンの影響などで、髪が徐々に細く、薄くなる。男性は生え際後退や頭頂部、女性は頭頂部中心にびまん性に薄くなるのが典型的。

・休止期脱毛症(きゅうしきだつもうしょう)

出産、高熱、手術、精神的ストレス、急激なダイエットなどをきっかけに、一時的に抜け毛が急増する状態。頭部全体が均一に薄くなることが多い。

・牽引性脱毛症(けんいんせいだつもうしょう)

ポニーテールや編み込みなど、髪を強く引っ張る髪型を長期間続けることで、生え際を中心に毛が抜ける。初期は可逆的だが、続くと瘢痕化することも。

・脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)に伴う脱毛

頭皮の過剰な皮脂分泌と炎症により、フケ、かゆみ、赤みと共に、びまん性の脱毛が見られることがある。

・円板状エリテマトーデス(DLE)

膠原病の一種。顔や頭皮に、境界明瞭な赤い発疹やフケ、毛穴の詰まりを伴う脱毛斑ができ、治った後に瘢痕(あと)が残る(瘢痕性脱毛)。

・毛孔性扁平苔癬(もうこうせいへんぺいたいせん、LPP)

毛穴の周りに赤みや角化が見られ、進行すると毛穴が失われ、瘢痕性の脱毛となる。かゆみを伴うことが多い。

・ 前頭線維化性脱毛症(ぜんとうせんいかせいだつもうしょう、FFA)

LPPの亜型。主に閉経後の女性に見られ、額の生え際が帯状に後退し、眉毛も薄くなる。瘢痕性脱毛。

・禿髪性毛包炎(とくはつせいもうほうえん、FD)

毛穴に膿疱(膿をもったできもの)が多発し、治癒後に瘢痕と脱毛を残す。毛が数本束になって生える(tufted hair)のが特徴的。

・ 頭部穿掘性膿瘍性毛包周囲炎(とうぶせんくつせいのうようせいもうほうしゅういえん、PCAS)

頭皮に痛みを伴うしこりや膿瘍ができ、互いに交通し、治癒後に瘢痕と脱毛を残す。若い男性に多い。

 ・梅毒性脱毛

梅毒(第2期)の症状の一つとして、虫食い状の不規則な脱毛斑や、びまん性の脱毛が見られることがある。血液検査で診断。

・先天性三角形脱毛症(せんてんせいさんかくけいだつもうしょう)

生まれつき、あるいは幼少時から、主にこめかみ付近に三角形の脱毛斑がある状態。毛は非常に細いか、全くない。変化しない。

・頭皮の悪性腫瘍(リンパ腫、転移性皮膚がんなど)

非常にまれだが、皮膚がんが脱毛斑やしこりとして現れることがある。生検による診断が必要。

・鉄欠乏(性貧血)

鉄分の不足により、びまん性の脱毛(休止期脱毛)が起こることがある。血液検査で診断。

・甲状腺機能異常(亢進症・低下症)

甲状腺ホルモンのバランス異常により、びまん性の脱毛が起こることがある。血液検査で診断。

・薬剤性脱毛

特定の薬剤(抗がん剤、一部の降圧薬、抗うつ薬など)の副作用として、脱毛(休止期脱毛や成長期脱毛)が起こることがある。服用中の薬を確認。

・外傷後・瘢痕性脱毛

やけどや怪我、手術などによって頭皮に瘢痕(きずあと)ができ、その部分の毛包が破壊されて毛が生えなくなった状態。


これらはあくまで一部です。気になる症状があれば、必ず皮膚科専門医にご相談ください。