赤ちゃんの肌トラブルにお悩みの方へ。将来の肌トラブルを防ぐ適切なスキンケアと治療を提案します。
湿疹の歴史に見る赤ちゃんの肌の戦い
乳児湿疹とは、医学的な単一の疾患名ではなく、生後1年未満の赤ちゃんに起こる様々な皮膚トラブルの総称です。一時的なものから、将来のアトピー性皮膚炎につながる可能性のあるものまで幅広く含まれます。
皮膚のトラブル、特に強いかゆみと湿疹に悩む病の記録は古くから存在します。紀元前には、古代ローマの権力者であるローマ皇帝アウグストゥスが、湿疹や喘息に苦しんだという記録があり、これはアトピー性疾患の始まりではないかと推定されています。
しかし、「乳児期」の湿疹に特化して医学的な注目が集まったのは、19世紀のフランスの皮膚科医ベニエーによる詳細な記述からです。この頃から、乳児の皮膚トラブルが、その後のアレルギー体質(アトピー)に深く関わるという認識が高まり、皮膚病学における重要なテーマとなっていきました。
赤ちゃんの湿疹は決して珍しいものではありません。ある報告によれば、生後1か月の赤ちゃんの約40%、そして生後6か月までに約67% が何らかの湿疹を経験するとされています。
これは、生後の急激な環境変化に対して、赤ちゃんの皮膚が順応しようとする、いわば「肌の卒業式」のようなものです。しかし、一過性の湿疹か、あるいはアトピー性皮膚炎の入り口なのかを正確に診断し、適切なケアを始めることが、その後の肌の健康を左右する鍵となります。
正確な鑑別診断と総合的アプローチ
「乳児湿疹」で小児科を受診するケースも多いですが、症状が湿疹や赤みである以上、皮膚の専門家である皮膚科医による診断も重要です。
乳児湿疹の背景には、皮脂の過剰分泌、乾燥、アレルギー、カビ、細菌感染など、様々な原因が複合的に絡み合っています。
全身管理や感染症の診断が得意ですが、皮膚の病変の「種類」や「皮膚バリア機能の評価」については、皮膚科専門医に一日の長があります。
一見同じように見える湿疹も、それが「新生児ざ瘡(ニキビ)」なのか、「脂漏性湿疹」なのか、あるいは「アトピー性皮膚炎」の初期段階なのかを、皮膚の状態や分布から正確に鑑別します。
当院では、湿疹が出た原因を突き止め、炎症を鎮めるとともに、将来的なアレルギー疾患(食物アレルギーやアトピー性皮膚炎など)の予防を見据えた治療を重視します。
乳児湿疹は、赤ちゃんの成長段階や原因によって現れ方が異なります。
バリア機能と外部刺激
赤ちゃんの皮膚は、大人に比べて皮膚の表面(角層)が薄く、デリケートです。
皮膚のバリア機能が未熟なため、外部からの刺激(アレルゲン、汗、よだれなど)が容易に皮膚内部に侵入し、炎症を引き起こしやすくなっています。
乳児湿疹の治療は「炎症を抑える」ことと「皮膚のバリア機能を整える」ことの二本柱です。
正しいスキンケアが、乳児湿疹の最良の予防と治療となります。
低刺激性の石鹸やシャンプーを使い、手のひらでよく泡立てて、泡で包むように優しく洗いましょう。特に皮脂の多い頭皮やかさぶたの部分は、強くこすらず、時間をかけて丁寧に洗い流します。
お風呂上がりや顔を拭いた後など、肌が清潔な状態の時に、保湿剤をたっぷり塗ります。カサカサが気になる部分だけでなく、全身に塗布し、乾燥を防ぎましょう。
脂漏性湿疹の黄色いかさぶたは、無理にはがすと皮膚を傷つけ、かえって悪化させることがあります。洗う前にベビーオイルなどでふやかしてから優しく洗い流すか、医師の指導に従ってください。
冬場は空気が乾燥します。加湿器などを使用し、室内の湿度を適切に保ち、乾燥から肌を守りましょう。
多くの乳児湿疹(脂漏性など)は、生後1歳頃になると皮脂のバリア機能が整って落ち着く傾向にあります。ただし、慢性的に続く場合は、アトピー性皮膚炎の可能性があるため長期的な治療が必要になる場合があります。
ステロイド軟膏は炎症を鎮める非常に効果的な薬ですが、漫然とは使いません。当院では赤ちゃんのデリケートな皮膚に合わせて、適切な強さのステロイド外用薬を使用します。自己判断で中止せず、正しい使い方を学ぶことが大切です。
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が乳児で2ヶ月以上、慢性的に繰り返される状態を指します。乳児湿疹は一過性のものが多いですが、慢性化した場合はアトピー性皮膚炎と診断されることがあります。
最近の研究では、乳児湿疹を早期に治し、皮膚のバリア機能をきれいに保つことが、食物アレルギーの予防にも重要であると示唆されています。湿疹があるうちにアレルゲンが皮膚から侵入するのを防ぐためにも、積極的な治療とスキンケアが推奨されます。
市販薬にもステロイドが含まれている場合があります。市販薬で改善しない場合は、当院にご相談ください。
当院では、豊富な小児皮膚科の診療実績と、アトピー性皮膚炎の最新の知識に基づき、一過性の湿疹から難治性のアトピー合併例まで、幅広く対応します。
乳児湿疹と症状が似ていたり、合併しやすい病気は以下の通りです。