水ぼうそうは、19世紀後半まで天然痘と区別されていませんでし。1888年には、帯状疱疹との関連性が明らかになっています。初めて「chicken pox(水痘)」という言葉が使われたのは1658年のことです。この病名に「chicken(ニワトリ)」という言葉が使われている理由については、病気の比較的軽度さを示すためなど、様々な説があります。1875年には、ルドルフ・シュタイナーが水ぼうそう患者の水疱液を健康な人に接種することで、水ぼうそうが感染性の病気であることを証明しました。1954年には、トーマス・ウェラーが細胞培養を用いて水ぼうそうと帯状疱疹患者の水疱液から水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)を分離することに成功しました。1970年代には日本で、健康な水ぼうそうの子供の水疱液から分離されたウイルスを用いて、生ワクチンが開発されました。このワクチンは、1988年に日本と韓国で、そして1995年には米国で12ヶ月以上の人々に使用が認可されました。
天然痘ワクチンの開発で世界的に有名なエドワード・ジェンナーは、水ぼうそうの研究に直接関わったわけではありませんが、彼の功績は感染症に対する免疫の概念を確立し、その後のワクチン開発に大きな影響を与えました。ジェンナーの革新的な貢献は、感染症との闘いにおける医学の進歩を示す一例と言えるでしょう。
水ぼうそうは、ワクチンが普及する以前は、多くの子供たちが経験する一般的な病気でした。しかし、その陰には深刻な事態も存在していました。1996年、当時12歳だったジョシュという健康な少年が、水ぼうそうによって突然亡くなったという悲しい出来事がありました。ジョシュの母親であるベヴ・コネリーさんは、当時まだ新しく、広く普及していなかった水ぼうそうワクチンについて、接種を受ける機会がなかったことを悔やんでいます。彼女の娘さんは軽い水ぼうそうを経験し、市販薬で回復しましたが、ジョシュの病状は急速に悪化し、肺炎を併発したことが原因でした。米国疾病予防管理センター(CDC)の報告によると、1995年に水ぼうそうワクチンが導入されるまで、米国では年間約400万人が水ぼうそうに感染し、10,500人から13,000人が入院、100人から150人が死亡していました。ジョシュの物語は、水ぼうそうが時に重篤な合併症を引き起こし、命に関わる可能性があることを示唆しています。ワクチン接種の普及後、水ぼうそうによる入院と死亡は劇的に減少しており、このことは予防接種の重要性を強く物語っています。
水ぼうそうの診断と治療は、最初は小児科医や内科医によって行われることが多いです。しかし、皮膚科医は、皮膚特有の症状や合併症に対処するための専門的な知識と技術を持っています。特に、強いかゆみ、瘢痕化の懸念、二次的な皮膚感染症などが疑われる場合は、皮膚科医の診察が推奨されます。また、合併症が疑われる場合や、妊婦、成人、免疫不全者など、特別な注意が必要な患者さんの場合には、皮膚科医への相談が検討されることがあります。
水ぼうそうは全身性のウイルス感染症ですが、その主な症状は皮膚に現れます。そのため、皮膚の専門家である皮膚科医は、水ぼうそうの皮膚症状や合併症に対して、特別な知識と経験に基づいた対応が可能です。当院では、患者様の信頼と地域に根差した医療を重視しており、お子様の皮膚の健康に関するあらゆるご相談に対応させていただきます。水ぼうそうに伴う皮膚のトラブルについても、安心してご相談ください。
水ぼうそうの潜伏期間は、水痘・帯状疱疹ウイルスに感染してから10日から21日です。発疹が現れる1〜2日前には、発熱、食欲不振、頭痛、倦怠感、全身のだるさなどの初期症状が見られることがあります。
水ぼうそうの典型的な発疹は、まず顔、頭皮、胸、背中に現れ、その後全身に広がります。発疹は、最初は小さな赤い斑点として現れ、数日かけて盛り上がった丘疹(ブツブツ)になります。その後、約1日で水を持った小さな水疱(水ぶくれ)となり、非常に強いかゆみを伴います。水疱は破れて液体が漏れ出し、その後かさぶた(痂皮)になります。新しい発疹は数日間次々と現れるため、様々な段階の発疹(赤い斑点、丘疹、水疱、かさぶた)が同時に見られることがあります。発疹の期間は約5〜10日間続くことが多いです。
乳幼児、幼児、年長の子供で症状や重症度に顕著な違いが見られるかについては、一般的に子供の症状は比較的軽いとされていますが、乳児や免疫力の低下した子供、大人では重症化する可能性があります。乳児の初期症状としては、発疹が現れる前にインフルエンザのような症状(高熱、食欲不振、眠気、過敏さ)が見られることがあります。水ぼうそうで入院した幼児の主な症状は、発熱、咳、頻呼吸、呼吸困難であり、消化器系の問題や呼吸器系の炎症を伴うこともあります。また、熱性けいれんや小脳失調などの神経系の合併症も報告されています。年長の子供の場合、症状は通常軽度から中等度ですが、重症例では全身に多数の発疹が現れ、全身症状を伴うことがあります。合併症として、中枢神経系の障害や二次的な細菌感染症などが起こりうることは年齢に関わらず注意が必要です。
発疹の段階 | 特徴 | 期間の目安 |
---|---|---|
紅斑(赤い斑点) | 小さく、かゆみを伴う赤い斑点 | 数日 |
丘疹(ブツブツ) | 盛り上がった赤いブツブツ | 数日 |
水疱(水ぶくれ) | 小さな水を持った水ぶくれ、強いかゆみを伴う | 約1日 |
痂皮(かさぶた) | 水疱が破れて乾き、かさぶたになる | 数日 |
水ぼうそうは、水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus:VZV)というヘルペスウイルスの一種によって引き起こされる感染症です。最初にVZVに感染すると水ぼうそうを発症し、その後ウイルスは体内の神経節に潜伏し、免疫力が低下した際などに帯状疱疹として再活性化することがあります。
水ぼうそうは非常に感染力が強く、感染者との直接的な接触(水疱、唾液、粘液)や、咳やくしゃみによる空気感染によって容易に広がります。また、感染者が触れた物を介して間接的に感染することもあります。帯状疱疹患者の水疱に直接触れることでも、水ぼうそうにかかったことのない人やワクチン接種をしていない人に水ぼうそうが感染する可能性があります。水ぼうそうの感染力は、発疹が現れる1〜2日前から、すべての水疱がかさぶたになるまで続きます。ワクチン接種を受けた人でも、水ぼうそうを発症した場合(ブレイクスルー感染)は感染力があります。
ワクチン接種が普及する以前は、ほとんどの人が10歳までに水ぼうそうに感染していました。しかし、1995年に水ぼうそうワクチンが導入されて以来、その発生率は劇的に減少し、米国では97%以上の減少が見られています。それでも、家庭内での感染率は非常に高く、感染者が出た場合、未感染の家族の約90%が感染すると言われています。ワクチン未接種の集団では、1歳から6歳の子供の発生率が最も高くなっています。
水ぼうそうは、発疹が現れる1〜2日前から感染力を持つため、学校や保育園などの集団生活の場では集団感染がおこることがあります。このため、早期の発見と隔離が、感染拡大を防ぐ上で重要になります。ワクチン接種の普及によって水ぼうそうの発生が大幅に減少したことは、予防接種が公衆衛生において非常に有効な手段であることを示しています。
健康な子供の場合、水ぼうそうは自然に治癒することが多く、特別な治療を必要としないことがあります。しかし、症状を和らげ、合併症のリスクを減らすために、以下のような治療法が行われることがあります。
一般的に用いられる抗ウイルス薬です。必要に応じ外用薬を併用することもあります。
重症化のリスクが高い場合に処方されることがあります。発疹が出てから24時間以内に投与を開始するのが最も効果的です。
当院では、お子様の状態やリスク要因を考慮し、最適な治療計画をご提案いたします。ご心配な場合は、お気軽にご相談ください。
お子様が水ぼうそうにかかった場合、ご家庭での適切なケアが大切です。
ご家庭でのケアについてご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
水ぼうそうは非常に感染力が強く、発疹が現れる1〜2日前から、すべての水疱がかさぶたになるまで感染力があります。
発疹の期間は約5〜10日間で、全体的な病気の期間も通常1週間程度です。
一般的な合併症には、皮膚や軟部組織の細菌感染症がありますが、肺炎、脳炎、出血性の問題、血流感染症、脱水などが起こる可能性もあります。まれに、ライ症候群や死亡に至ることもあります。
水ぼうそうワクチンは、水ぼうそうを予防する最も効果的な方法であり、重症化を防ぎます。2回の接種が推奨されています。
4日以上続く発熱、高熱(38.9℃以上)、発疹部位のひどい赤みや腫れ、膿が出る、意識がもうろうとしている、歩行困難、首が硬い、頻繁な嘔吐、呼吸困難、激しい咳、激しい腹痛、出血や紫斑を伴う発疹などの症状が見られた場合は、すぐに医師の診察を受けてください。
水ぼうそうに一度かかると、通常は免疫ができて二度とかかることはありません。しかし、まれに再感染することもあります。ワクチン接種を受けた場合、症状が軽く、発疹の数も少ないことが多いです。
どちらも同じ水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされます。水ぼうそうは最初の感染で起こり、全身に発疹が出ますが、帯状疱疹は潜伏していたウイルスが再活性化して起こり、体の片側に痛みを伴う水疱が現れます。
水ぼうそうと似た症状を示す皮膚疾患や子供の病気はいくつかあります。正確な診断のためには、医療機関の受診が重要です。
・虫刺され
・伝染性膿痂疹
・麻疹
・風疹
・突発性発疹
・伝染性紅斑(リンゴ病)
・手足口病
・単純ヘルペスウイルス感染症
・疥癬
・蕁麻疹
・伝染性軟属腫
・丘疹状蕁麻疹
・疱疹状皮膚炎
・カポジ水痘様発疹症
・薬疹
・髄膜炎菌血症
・サル痘
・急性痘瘡状苔癬状粃糠疹
・新生児梅毒
・多形滲出性紅斑
・猩紅熱
・あせも
これらの病気の中には、水ぼうそうとは治療法が異なるものもあります。自己判断せずに、必ず医師の診断を受けるようにしてください。
当院では患者様一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を心がけ、お子様の皮膚の健康をしっかりとサポートいたします。お子様の水ぼうそうに関するご心配事があれば、ぜひ当院にご相談ください。専門医による正確な診断と適切な管理により、お子様が一日も早く元気になるようお手伝いさせていただきます。