長い冬が明け、雪解けのころに畑や庭さきへ春の光がさしこむと、じっと縮こまっていた作物や草花が、少しずつ芽をのばしていきますね。日ざしというと「浴びすぎると肌に悪いもの」という印象をお持ちの方が多いと思いますが、じつは光そのものは、量や波長(はちょう。光の種類)をきちんと選べば、からだにとってよいはたらきをしてくれます。この「良い紫外線」を、医療機器できめこまかく管理しながら皮膚の病気の治療に役立てるのが、今回ご紹介する紫外線治療(光線療法。こうせんりょうほう)です。
光線療法は、特定の波長の紫外線(しがいせん)を皮膚にあてて、過剰(かじょう)になってしまった免疫(めんえき)や炎症の反応をしずめていく治療です。日光浴のように「なんとなく浴びる」のではなく、病気に効くとされる狭い範囲の波長だけを、必要な量だけあてるのが大きなちがいです。
まず安心していただきたいのは、これは美容の自由診療ではなく、皮膚科で広く行われている標準的な保険診療の治療だということです。国内で承認された医療機器を用い、乾癬(かんせん)やアトピー性皮膚炎、白斑(はくはん)などの治療として、長年の実績と根拠(エビデンス)の積み重ねがあります。塗り薬や飲み薬だけでは十分でないときに、心強い選択肢のひとつになります。

光線療法は、皮膚のさまざまな慢性(まんせい。長く続く)の病気に用いられます。おもに次のような疾患(しっかん)が対象になります。
どの病気に、どのくらいの強さで行うのがよいかは、一人ひとりの状態によって変わります。効果の出方には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束できるものではありません。まずは診察のうえで、光線療法が向いているかどうかを一緒に考えていきます。
光線療法は「光をあてるだけ」と聞くと手軽に感じられるかもしれませんが、じつは照射量(しょうしゃりょう。あてる紫外線の量)の見きわめがとても大切な治療です。だからこそ、皮膚を専門とする医師の管理のもとで受けていただくことに意味があると、私は考えています。
つまり光線療法は、皮膚の知識と、量を管理するしくみがそろってはじめて、安全に活きる治療なのです。
ひとくちに紫外線治療といっても、いくつかの種類があります。当院をふくめ皮膚科で広く使われているのは、おもに次の2つです。あてる範囲や波長によって、得意とする場面が異なります。
どちらを選ぶか、あるいは組み合わせるかは、病気の種類や広がり、部位によって決めていきます。「広く均一にあてたいのか」「狭い部分に集中してあてたいのか」で使い分ける、とお考えいただくとわかりやすいと思います。
では、紫外線をあてるとなぜ皮膚の病気がよくなるのでしょうか。乾癬やアトピー性皮膚炎では、皮膚の中で免疫を担う細胞(とくにT細胞。ティーさいぼう)が過剰にはたらき、炎症やかゆみ、異常な角化を引き起こしています。特定の波長の紫外線は、この過剰にはたらいている免疫細胞の活動を、おだやかにしずめる方向にはたらくと考えられています。畑にさす春の光が作物の育ちをととのえるように、あばれすぎた免疫の反応を「ちょうどよい」ほうへ導いていく、というイメージです。
また尋常性白斑では、少しはたらきの異なる面があります。色が抜けた部分の色素細胞(メラノサイト)を刺激し、そのはたらきを促す方向に作用することで、色がもどってくることを期待します。同じ紫外線でも、病気によって「しずめる」場合と「うながす」場合があるのが、光線療法の奥ぶかいところです。
このように、紫外線治療は薬を足していく治療とは少しちがい、皮膚がもともと持っている免疫や色素のバランスを、光の力でととのえていく治療だといえます。だからこそ、効果はゆっくりあらわれ、続けることが大切になります。
光線療法は、一度あてて終わりではなく、少しずつくり返して積み重ねていく治療です。通院のペースは、おおむね週1〜2回程度が目安になります。効果は数週間から数か月かけて、ゆっくりとあらわれてくることが多いです。あせらず続けていただくことが、なにより大切です。
一回ごとの照射時間は、部位や設定にもよりますが、多くは数十秒から数分程度と短時間です。皮膚の反応を見ながら、あてる量を少しずつ調整していきます。実際の一回の流れは、次のようなイメージです。
効果や皮膚の反応には個人差がありますので、途中で量やペースを見直すこともあります。「なかなか変わらない」と感じる時期もあるかもしれませんが、光線療法はゆっくり効いてくる治療です。気になることがあれば、そのつどご相談ください。
光線療法は、比較的安全性の高い治療とされていますが、医療行為である以上、リスクや副作用がまったくないわけではありません。良い面だけでなく、注意点も公平にお伝えしておくことが大切だと考えています。
こうしたリスクは、正しい診断と量の管理によって、できるかぎり小さく抑えることができます。気になる症状が出たときは、がまんせず当院にお知らせください。皮膚科として最後まで経過を診てまいります。
光線療法(ナローバンドUVB・エキシマライトなど)は、対象となる病気に対して健康保険が適用される保険診療です。美容目的の自由診療とは異なり、公的な医療保険のしくみのなかで受けていただけます。
実際の費用は保険適用で1000円程度です。くわしくは受診時にご説明します。ご不安な点があれば、費用のこともふくめてお気軽におたずねください。
残念ながら、代わりにはなりません。日焼けサロンは治療に有効な狭い波長だけを選んであてるわけではなく、量の管理もされていません。かえって皮膚への負担や、日焼け・色素沈着のリスクを高めてしまうことがあります。光線療法は、医療機器で波長と量を管理してこそ意味のある治療です。
病気や個人差にもよりますが、多くは数週間から数か月かけて、少しずつあらわれてきます。すぐに変化を感じにくい時期もありますが、続けることが大切です。効果には個人差があり、一律の結果をお約束するものではありません。
照射そのものに強い痛みはありません。あてたあとに、日焼けのような赤みやヒリつきを感じることがありますが、多くは一時的です。
状況によって判断が変わりますので、妊娠中の方、また妊娠の可能性がある方は、かならず事前にお申し出ください。ほかにも飲んでいるお薬や体質によって注意が必要な場合がありますので、遠慮なくお知らせください。
必ずしもやめる必要はなく、むしろ塗り薬などと組み合わせて行うことも多い治療です。今お使いのお薬があれば、診察の際にお伝えください。全体のバランスを見ながら計画を立てます。
病気の種類や状態によって異なります。週1〜2回程度を継続していただくことが多いですが、経過を見ながら回数やペースを一緒に調整していきます。
紫外線治療(光線療法)は、雪解けの春の光が作物の育ちをととのえるように、良い波長の紫外線をきめこまかく管理しながら、皮膚の過剰な免疫や炎症をしずめ、白斑では色素細胞のはたらきをうながしていく治療です。ナローバンドUVBは広い範囲に、エキシマライトは狭い部分にピンポイントで、といった使い分けができ、乾癬・アトピー性皮膚炎・白斑・掌蹠膿疱症・円形脱毛症・痒疹などに用いられます。塗り薬や飲み薬だけでは十分でないときの、心強い選択肢のひとつです。そしてなにより、これは国内承認の医療機器を用いた、保険適用の標準的な治療であり、根拠の積み重ねがある点が安心材料です。一方で、赤みやヒリつき、長期的な理論上の懸念といった注意点もあり、照射量と累積の管理が欠かせません。新潟県三条市のけんおう皮フ科クリニックでは、皮膚の専門医として、良い面も注意点も包み隠さずお伝えし、みなさまが納得して治療を続けられるよう努めてまいります。気になることは、どうぞお気軽にご相談ください。