太古の昔から、人々は美を追い求め、その基準は時代とともに移り変わってきました。古代エジプトでは、クレオパトラがナイル川の泥やミルクで肌を整え、美を保ったと言われています。また、日本の平安時代には、白く透き通るような肌が美人の象徴とされ、お歯黒や白粉でその美意識を表現しました。これらの歴史が示すように、肌の美しさは、いつの時代も人々の心を惹きつける普遍的な価値でした。
しかし、生物の世界に目を向けると、美しさは単なる外見だけではありません。
たとえば、クジャクの羽やモルフォ蝶の鮮やかな青色は、色素ではなく光の反射や干渉によって生まれる「構造色」であり、その美しさは生命の巧妙な生存戦略を物語っています。私たちの肌の色を左右するメラニン色素も同様です。これは単に肌を黒くする成分ではなく、肌細胞の核を紫外線から守る、生命にとって不可欠な防御システムです。シミ・そばかす治療は、このメラニンを無闇に消し去ることではなく、過剰に蓄積したメラニンを適切に処理し、肌本来のバランスと輝きを取り戻すための、生命の科学に基づいた医療なのです。当院は、この本質的な美しさを追求し、お一人おひとりの肌と向き合っています。
シミ・そばかすは、見た目は似ていても、その原因や種類は多岐にわたります。
ご自身の肌悩みがどのタイプかを知ることが、美肌への第一歩となります。
加齢とともに現れる良性の腫瘍で、「老人性イボ」とも呼ばれます。一見するとシミのように見えますが、わずかに盛り上がりがあり、表面がざらざらしているのが特徴です。美白剤では効果がなく、レーザー治療や外科的なアプローチが必要です。
雀の卵のような小さな斑点が、顔の中心、特に鼻や頬にかけて多発するものです。3歳以降の幼児期に発症し、思春期に最も目立つことが特徴で、遺伝的要因が強く、色白の方に多く見られます。
30歳以降の女性に多く見られる、薄茶色や灰褐色のシミです。頬骨の高い位置に左右対称に、もやっと広がるのが特徴で、肝臓の表面の模様に似ていることからこの名がつきました。紫外線だけでなく、摩擦刺激、女性ホルモンの影響や妊娠、ストレスなどが複雑に関わって発生すると考えられています。洗顔やクレンジングによって無意識に皮膚をこすることによって目立つ方もいます。
シミの種類 | 特徴的な見た目 | 好発部位 | 主な原因 |
---|---|---|---|
老人性色素斑 | 境界が比較的はっきりした茶色の斑点 | 顔、手の甲など紫外線が当たる場所 | 紫外線、加齢 |
そばかす |
小さな斑点が点状に広がる |
鼻、頬、肩など顔の中心部 | 遺伝、紫外線 |
肝斑 | 輪郭がぼやけた薄茶色の広がり | 両側の頬骨、額、口の周り | ホルモンバラン
ス、紫外線、摩擦 |
ADM | 青みがかった灰色の小さな斑点 | 両頬、目の下、鼻の周り | 原因不明(真皮性) |
脂漏性角化症 | わずかに盛り上がったザラザラした斑点 | 顔、頭、背中など全身 | 加齢、紫外線 |
炎症後色素沈着 | 傷やニキビの跡が茶色くなったもの | 炎症が起きた部位 |
炎症、摩擦、紫外線 |
シミ治療を成功させるための第一歩は、ご自身のシミを正しく「知る」ことです。シミの種類によって治療法が全く異なるため、正確な診断がなければ、効果が得られないばかりか、かえって症状を悪化させてしまうリスクもあります。
シミ治療の成否は「9割が診断で決まる」と考えられています。
エステサロンや一般的な化粧品による美肌ケアは、リラクゼーションや肌のコンディションを整える上では素晴らしい役割を果たします。しかし、エステは医療機関ではないため、医療用レーザーや医薬品の使用はできません。そのため、メラニン色素を直接破壊し、シミを根本的に除去するような施術は行えず、あくまで肌のターンオーバーを促進し、シミを徐々に薄くすることを目的としています。
一方、美容皮膚科では、皮膚科専門医が肌を詳細に診断し、そのシミが老人性色素斑なのか、治療が難しい肝斑なのか、あるいは放置すると悪性化する可能性のある病変ではないかまで見極めます。セルフケア用の美白化粧品は、メラニンの生成を抑制する作用が中心であり、すでにできてしまったシミへの効果は限定的です。また、シミを隠そうとして過度に摩擦を加えたり、肌質に合わない高濃度の美白美容液を使ったりすると、肌が炎症を起こし、かえってシミを濃くする「炎症後色素沈着」を招いてしまう危険性も指摘されています。
シミができる仕組みは、私たちの肌の防御機能と深く関係しています。肌の最も外側にある表皮は、紫外線などの外部刺激から身体を守る役割を担っており、その最下層(基底層)にはメラノサイトという色素細胞が存在します。
紫外線や摩擦、ニキビなどの炎症によってメラノサイトに刺激が加わると、肌細胞を守るために、メラノサイトがメラニンという色素を生成します。通常、このメラニンは肌のターンオーバー(新陳代謝)によって、約42日周期で古い角質とともに体外に排出されます。しかし、長時間の強い紫外線、加齢、ストレスなどが原因でターンオーバーのサイクルが乱れると、メラニンがうまく排出されず、表皮内に蓄積してシミとして定着してしまうのです。近年、紫外線を受けた肌細胞から分泌される「MIF(マクロファージ遊走阻止因子)」という物質が、メラニン生成酵素を分解しにくくすることで、シミをさらに悪化させるという新しいメカニズムも解明されています。
新潟は、夏は短く蒸し暑く、冬は曇りや雪の日が多い地域です。一般的に「曇りの日が多いから紫外線対策はしなくても大丈夫」と考えられがちですが、これは大きな誤解です。紫外線は雲を透過して地上に降り注ぎ、特に冬季は、雪が紫外線を最大80%も反射させるため、スキーやスノーボードといったウィンタースポーツを楽しむ際は、通常よりも強い紫外線ダメージを受けることになります。
また、年間を通じて湿度は高いものの、室内の暖房や空調による乾燥、寒暖差が肌のバリア機能を低下させ、シミの原因となる炎症を引き起こすリスクを高めます。
当院は、シミ治療において「正確な診断」と「お客様一人ひとりに合わせたオーダーメイド治療」が最も重要であると考えています。単一のレーザーで全てのシミを治療することはできません。シミの種類、深さ、肌質、そしてお客様のライフスタイルを総合的に考慮し、最適な治療プランをご提案します。
当院では、複数の最新医療機器を組み合わせることで、多様なシミの悩みに対応しています。
機器名 | 特徴と仕組み | 主な適応疾患 |
---|---|---|
Qスイッチルビーレーザー |
いわゆる「深いレーザー」 メラニン色素への選択性が最も高く、濃いシミをピンポイントで破壊 |
老人性色素斑、そばかす、ADM、小じわ 青あざ(蒙古斑)、茶あざ(扁平母斑) |
CO2レーザー |
いわゆる「手術用レーザー」 水分に吸収されやすい特性を利用し、皮膚の組織を削り、蒸散させる |
脂漏性角化症、盛り上がったシミ、ホクロ、イボ |
ジェントルマックスプロ(アレキサンドライトレーザー、YAGレーザー) |
いわゆる「浅いレーザー」 2種類の波長を使い分け、顔全体のくすみや薄いシミをマイルドに改善 |
顔全体のくすみ、薄いシミ、毛穴、そばかす、小さいホクロ |
ハイドラピール |
特殊なチップと美容成分を含んだ水流で、角質や皮脂を優しく除去する |
全体のくすみ、毛穴、ニキビ |
ケアシス(エレクトロポレーション) |
特殊な電気パルスで細胞間に隙間を作り、美容成分を肌の奥深くへ浸透 |
治療後の冷却・鎮静・美白、くすみ、肝斑 |
ケミカルピーリング |
薬剤を用いて古い角質や毛穴汚れを除去し、肌の再生とターンオーバーを促す |
毛穴、ニキビ、全体のくすみ、小じわ |
水光注射 |
薬剤を注射して肌の再生を促し、くすみや赤みを改善 |
顔の赤み、毛穴、くすみ、小じわ |
美容皮膚科のシミ治療は、単に「シミを薄くする」だけでなく、肌そのものを健やかに導くための医療行為です。当院では、以下のような治療法を、お客様の肌状態に合わせて組み合わせてご提案します。
ジェントルマックスプロを使用したレーザーフェイシャルは、顔全体にマイルドなレーザーを照射し、薄いシミやくすみ、毛穴の引き締めを目的とした治療です。ダウンタイムは数日~1週間程度、メイクも当日から可能です。
Qスイッチルビーレーザーは、メラニンへの吸収率が他のレーザーに比べて特に高く、周辺組織へのダメージを抑えながら、濃いシミやそばかすをピンポイントで破壊します。多くの場合、1回の治療で高い効果が期待できます。
「濃いシミは取りたいけれど、ダウンタイムでかさぶたを貼るのが嫌だ」「広範囲の薄いシミやADMにも効果的な治療がしたい」という方のために、当院はルビーフラクショナルレーザーを導入しています。これは、シミ治療で最も高いメラニン選択性を持つQスイッチルビーレーザーを、フラクショナル(点状に照射する)技術と組み合わせた革新的な治療法です。
レーザー以外にも肝斑、肌のくすみ、炎症後色素沈着に有効な治療があります。レーザー治療後の「戻りジミ」(炎症後色素沈着)は、7割以上の方が経験するというデータがあります。これは、レーザーの刺激による炎症反応が原因で、一時的にメラニンが増える現象です。当院では、この「戻りジミ」を予防するため、治療後のアフターケアに力を入れています。
古い角質層に溜まったメラニンを優しく除去し、肌のターンオーバー(新陳代謝)を正常化します。ピーリングによって角質が除去されると、その後に使用する美白成分の浸透率も向上します。
特殊な電気パルスを用いて、肌のバリア機能に一時的に小さな隙間を作り、イオン導入では浸透させることができなかった高分子の美容成分(トラネキサム酸、ビタミンCなど)を肌の深部まで浸透させる治療です。レーザー治療後の鎮静や、肝斑治療との併用で高い効果が期待できます。
美容液の渦巻き状の水流を利用し、クレンジング、ピーリング、吸引、美容液導入の全てを同時に行う最新の美肌治療です 。通常の洗顔やピーリングでは取りきれない毛穴の奥の汚れや、古い角質を優しく除去し、肌のくすみを即座に改善します 。
キュアジェット(CUREjet)は、針を使わずに美容成分を肌の奥に浸透させる医療機器です。空気圧のジェット噴射を利用し、ニキビ跡の凹みや深いシワの原因となる線維組織を分断する「マイクロサブシジョン」という治療も可能です。
痛みが少なく、ダウンタイムも短いのが特徴。肌の状態や目的に合わせ、局所的な悩みから顔全体の美肌まで、幅広く対応します。
極細の針がついた専用の機器を用い、ヒアルロン酸、ポリ乳酸、ボトックスなどの美肌成分を肌の浅い層(真皮の浅層)に均一かつ定量的に注入する治療です。これにより肌の潤いやハリを改善し、乾燥による小じわやくすみを解消します。麻酔クリームを併用することにより痛みが少なく、肌の表面の小じわやくすみの改善に比較的効果があるとされています。
メラニン生成を強力に抑制するハイドロキノンや、肌のターンオーバーを促進するトレチノインなどを併用することで、炎症後色素沈着を防ぎ、シミの再発を防止します。
肝斑治療に有効なトラネキサム酸や、メラニン還元作用を持つビタミンCなどを内服することで、内側からシミの改善をサポートします。
肝斑治療に有効なトラネキサム酸や、メラニン還元作用を持つビタミンCなどを血管から注入することで、内側からシミの改善をサポートします。
お客様ご自身の血液から抽出した「多血小板血漿(PRP)」を肌に注入する治療です。PRPには、肌の再生を促す成長因子が豊富に含まれており、特に治療が難しいとされる肝斑に対して「有望な治療法」であることが、近年注目されています。肌のコラーゲン生成を促し、肌質そのものを改善する効果も期待できます。
美しい肌は、日々の生活習慣によって育まれます。特に新潟の気候や文化に合わせた3つの秘訣をご紹介します。
患者様が特に気になる疑問にお答えします。
痛みには個人差がありますが、輪ゴムで軽く弾かれたような「パチン」という感覚と表現されることが多いです。痛みがご心配な方には、麻酔クリームを使用することで、痛みを最小限に抑えることが可能です(レーザーの場合、麻酔クリームは別途3,300円)。
シミをピンポイントで除去するレーザー治療の場合、保護テープを貼っていただきますが、その上からメイクをすることは可能です。レーザーフェイシャルなどダウンタイムが少ない治療の場合は、施術直後からメイクをしていただけます。
シミの数、大きさ、種類、選択する治療法によって大きく異なります。当院では、カウンセリング時に患者様の状態に合わせた最適な治療プランと費用を明確にご提示します。
美容目的のシミ治療は、原則として健康保険の適用外となり、自費診療となります。ただし、アザや一部の病変に対しては保険適用となる場合もありますので、まずはご相談ください。
レーザー治療で破壊したシミは基本的に再発しませんが、加齢・紫外線や摩擦などの生活習慣によって、数年後に新たなシミが発生すると言われています。当院では、治療後のアフターケア指導や内服・外用薬を併用し、シミの再発予防までサポートいたします。
シミやそばかすは、長年の紫外線ダメージや肌の歴史を物語るもの。決してネガティブなものではありません。しかし、それらがコンプレックスとなり、輝く笑顔を妨げているとしたら、それはとても残念なことです。
シミ治療の成功は、ご自身のシミを正しく知り、適切な治療と日々のケアを組み合わせることから始まります。エステやセルフケアで改善しないと諦めていたシミも、皮膚科専門医による正確な診断と、最新の医療機器によるアプローチによって、解決できる可能性は十分にあります。
当院は、単にシミを取るだけでなく、その先の「お客様の輝く笑顔と満足度」を第一に考えています。まずは、カウンセリングであなたのお肌のお悩みをお聞かせください。一緒に、美肌を叶える最適なプランを見つけ、自信あふれる毎日をサポートいたします。
以下に挙げるお悩みやケアは、シミと混同されやすく、自己判断での対応が逆効果になることがあります。