診断への挑戦は続く
医学が目覚ましい進歩を遂げるはるか昔から、人々は原因のわからない皮膚のトラブルに悩まされてきました。 古代ギリシャの医師ヒポクラテスも、様々な皮膚病を観察・記録していますが、その中には現代の知識をもってしても、当時の記述だけでは診断が難しいものも含まれます。 歴史上の人物の中にも、原因不明の皮膚症状に生涯苦しんだとされる例は少なくありません。
これらのエピソードは、「原因不明の発疹」という状況が決して現代特有のものではなく、人類が長年向き合ってきた課題であることを物語っています。 しかし、重要なのは、かつて「原因不明」とされた多くの皮膚症状が、現代の皮膚科学の進歩によって診断・治療可能になっているという事実です。 原因がすぐには分からない発疹に直面すると不安に感じるのは当然ですが、それは診断への道のりの第一歩なのです。
それは診断へのスタートライン
「原因不明の発疹」とは、特定の病気の名前ではありません。 文字通り、体に現れた発疹(赤み、ぶつぶつ、水ぶくれ、かゆみなど)の原因が、すぐには特定できない「状態」を指します。 突然の症状に、「何か悪い病気では?」と心配になるかもしれませんが、皮膚科を受診される方の多くが、最初はこのような「原因不明」の状態から診断プロセスを開始します。
大切なのは、「原因不明」が「診断不能」を意味するわけではない、ということです。 皮膚はしばしば「内臓の鏡」と言われるように、体内の健康状態を映し出すことがあります。 アレルギー、感染症、内臓の病気、服用している薬の影響など、原因は多岐にわたりますが、皮膚科専門医による丁寧な診察と適切な検査を通じて、多くの場合、原因を突き止め、適切な治療につなげることが可能です。 この「原因不明」という状態は、診断へのスタートラインであり、解決への第一歩なのです。
「原因不明の発疹」という状態そのものの正確な統計はありませんが、皮膚科の日常診療において、原因特定が必要な発疹で受診される方は非常に多くいらっしゃいます。 最終的に、湿疹・皮膚炎群(アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎など)、蕁麻疹、薬疹、感染症(真菌、細菌、ウイルス)といった比較的よく見られる病気と診断されることが多いですが、時に膠原病や内臓疾患のサインである可能性も否定できません。 原因がわからないからこそ、専門的な診断が重要になるのです。
皮膚科医は、皮膚、髪、爪の病気を専門的に診断・治療するために、長年のトレーニングを積んだ専門家です。 数千種類とも言われる皮膚疾患を、見た目の微妙な違い(発疹の色、形、分布、質感など)から見分ける「目利き」の力、そして皮膚の構造(組織)レベルでの変化を理解する知識を持っています。 一見似たような発疹でも、専門医が見れば全く異なる病気であることは珍しくありません。 この専門的な知識と経験が、的確な診断への鍵となります。
内科医も全身の病気を診ますが、皮膚科医は皮膚に現れたサイン(デルマドローム)から内臓の病気を疑い、診断につなげることに特化しています。 「皮膚は内臓の鏡」という言葉通り、皮膚の変化を読み解く専門家です。
小児科医は一般的な子どもの発疹に対応しますが、治りにくい、繰り返す、あるいは稀な発疹の場合、皮膚科医の専門知識が必要です。 特に遺伝性の皮膚疾患やアレルギーが関わる場合、皮膚科での診断・管理が重要になります。
アレルギー科は特定のアレルギー(花粉症、食物アレルギーなど)を主に扱いますが、皮膚科はアレルギー性の発疹(接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎など)だけでなく、感染症、自己免疫疾患、薬剤性など、より広範な原因による皮膚症状を診断・治療します。
皮膚科では、診断精度を高めるために特有の検査を行います。
特殊な拡大鏡で、発疹の表面構造を詳細に観察します。
局所麻酔下に皮膚のごく一部を採取し、顕微鏡で組織の変化を調べる検査です。 見た目だけでは診断が難しい場合に、確定診断のために極めて重要です。 皮膚の内部で何が起こっているかを直接見ることで、炎症の種類や原因の手がかりを得ます。
アレルギーの原因を探るパッチテスト、真菌(カビ)を確認する顕微鏡検査、細菌・ウイルスの検査なども、必要に応じて行います。
これらの専門的な診察・検査を通じて、他の診療科では見逃されがちな皮膚の病気や、その背景にある全身の問題を早期に発見することが、皮膚科の重要な役割です。 原因不明の発疹に対して、最初に皮膚科専門医に相談することが、結果的に診断への近道となり、不必要な検査や効果の乏しい治療を避けることにも繋がります。
当院では、「原因不明の発疹」に対して、単に症状を抑えるだけでなく、その根本にある「原因」を可能な限り突き止めることを最優先に考えています。 なぜなら、原因を取り除かない限り、一時的に症状が改善しても再発を繰り返したり、背景にある重要な病気を見逃したりする可能性があるからです。
そのために、以下のステップを重視しています。
いつから、どこに、どんな症状が、どのように変化してきたか。 生活習慣、アレルギー歴、服用中の薬(市販薬、サプリメント、漢方薬を含む)、最近の環境変化、ご家族の病歴、そして新潟県ならではのアウトドア活動(キャンプ、山菜採り、農作業など)の有無なども含め
、詳しくお話を伺います。
皮膚科専門医が、発疹の性状、分布、範囲などを詳細に観察します。
問診と診察に基づき、原因究明に必要と考えられる検査を計画します。
診断や治療方針については、患者様に分かりやすく丁寧にご説明し、十分にご納得いただいた上で治療を進めることを大切にしています。 地域の皆様に信頼される「かかりつけ医」として、お一人おひとりのライフスタイルや価値観に寄り添った医療を提供することを目指しています。
原因不明の発疹の診断のために、当院では以下のような検査を行うことが可能です。
血液検査(特異的IgE抗体など)、パッチテスト(金属、化粧品成分など)、プリックテスト
顕微鏡検査(真菌、疥癬など)、細菌培養検査、ウイルス抗原検査
全身状態の評価(肝機能、腎機能、血糖など)、膠原病関連の抗体検査
確定診断に不可欠な場合に行います。
これらの検査を組み合わせることで、多角的に原因を探ります。 必要に応じて、より高度な画像検査(CT、MRIなど)や専門的な治療が必要と判断される場合は、地域の基幹病院や大学病院と連携し、適切な医療機関へご紹介いたします。
診断が確定した際には、その疾患に応じた最適な治療法をご提案します。 当院では、一般的な外用薬(塗り薬)や内服薬(飲み薬)による治療に加え、必要に応じて以下の機器を用いた治療も行っています。
尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎、尋常性白斑、掌蹠膿疱症など、限られた範囲の炎症性疾患に有効な紫外線療法です。
当院の多岐にわたる診断ツールと治療選択肢は、患者様が抱える「原因不明」の不安を解消し、的確な診断と効果的な治療へと繋げるためのものです。
「原因不明の発疹」は、実に様々な形で現れます。 皮膚科医は、その「見た目」と「現れた場所」から、原因を探るヒントを得ています。
「頭や顔のフケやかゆみが、塗り薬を使ってもなかなか治らない」
脂漏性皮膚炎の可能性が高いですが、治りにくい場合は、接触皮膚炎(シャンプーなど)、アトピー性皮膚炎、真菌感染、まれに膠原病(皮膚筋炎)なども考えられます。
「まぶたが腫れてかゆい」
化粧品や点眼薬などによる接触皮膚炎(かぶれ)、虫刺され、蕁麻疹などがよく見られます。 長引く場合や他の症状がある場合は、膠原病(皮膚筋炎、シェーグレン症候群)や、まれに腫瘍性疾患なども考慮します。
「急に頬が赤く腫れて痛い」
細菌感染症(丹毒、蜂窩織炎)、帯状疱疹などが考えられます。 特に丹毒や蜂窩織炎は、鼻や耳の小さな傷から菌が入ることがあります。
「熱が出て、全身に赤いぶつぶつが広がってきた」
ウイルス感染に伴う発疹や薬疹(薬剤アレルギー)の可能性が高いです。 特に成人では薬疹や膠原病の初期症状も疑います。 高熱や強い倦怠感を伴う場合は、重症薬疹や他の重篤な感染症、膠原病の可能性も考え、迅速な対応が必要です。
「体中に、ものすごくかゆい硬いしこりができてきた」
結節性痒疹という、強いかゆみを伴う慢性的な病気の可能性があります。 虫刺されがきっかけになることもあります。 まれに内臓疾患や感染症(疥癬など)が隠れていることもあります。
発疹の原因や種類は、年齢によってもある程度傾向があります。
アトピー性皮膚炎、おむつ皮膚炎、乳児脂漏性皮膚炎、ウイルス性発疹(突発性発疹など)、あせも、とびひ、まれに遺伝性疾患、ランゲルハンス細胞組織球症
アトピー性皮膚炎、ウイルス性発疹(水痘、手足口病など)、とびひ、水いぼ、蕁麻疹、虫刺され、接触皮膚炎(植物、金属)、ニキビ、乾癬
湿疹・皮膚炎(接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎など)、蕁麻疹、薬疹、帯状疱疹、足白癬(水虫)、乾癬、膠原病の初発症状、内臓疾患に伴う皮膚症状(デルマドローム)
皮脂欠乏性湿疹(乾燥による湿疹)、帯状疱疹、皮膚掻痒症(かゆみ)、老人性いぼ、皮膚がん(日光角化症、基底細胞がんなど)、水疱性類天疱瘡、薬疹
もちろん、これはあくまで一般的な傾向です。 どの年齢層でも様々な発疹が現れる可能性があり、「いつもと違う」「治りが悪い」と感じたら、年齢に関わらず専門医の診察を受けることが大切です。 特に、一般的な病気が好発する年齢とは異なる年齢で発症した場合(例えば、高齢者のアトピー性皮膚炎様の発疹など)は、別の病気が隠れている可能性も考え、より慎重な診断が必要となります。
発疹の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合って生じることがあります。 だからこそ、最初は「原因不明」に見えることが多いのです。 大きく分けて、体の外からの刺激によるものと、体の中の問題によるものがあります。
洗剤、石鹸、化学物質、衣類の摩擦などが、皮膚のバリア機能を壊して炎症を引き起こします(刺激性接触皮膚炎)。
新潟の野山にも見られるウルシ、ギンナン、サクラソウなど。 アウトドア活動や庭仕事での接触に注意が必要です。
アクセサリー(ニッケル、コバルト、クロム)、革製品、化粧品、歯科金属など。
化粧品、毛染め剤、消毒薬、ゴム製品などに含まれる成分。
薬剤(塗り薬)、ハウスダスト、ダニ、ペットの毛など。
ブドウ球菌、レンサ球菌など(とびひ、丹毒、蜂窩織炎の原因)。
白癬菌(水虫、たむし)、カンジダ菌など。
ヘルペスウイルス(口唇・性器ヘルペス、帯状疱疹)、麻疹、風疹、水痘ウイルスなど。
疥癬虫(ヒゼンダニ)、シラミなど。
蚊、ブヨ(ブユ)、アブ、ハチ、そして特に注意が必要なのがマダニです。 マダニは、日本紅斑熱、ライム病、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)といった重篤な感染症を媒介することがあり、発熱を伴う発疹が見られた場合は特に注意が必要です。 新潟県の自然豊かな環境では、これらの虫との接触機会も多くなります。
日光(紫外線)、寒冷、温熱、圧迫、放射線など。
食べ物、薬剤、吸入したものなどに対する反応として、蕁麻疹やアナフィラキシーなどが起こります。
免疫システムが誤って自分自身の皮膚や他の臓器を攻撃してしまう病気です。 全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎、強皮症、血管炎、天疱瘡、類天疱瘡などが含まれます。 これらの病気では、特徴的な皮疹が診断の手がかりとなることが多くあります。
特定の皮疹が、胃がん、肺がん、大腸がん、血液がんなどの存在を示唆することがあります(例:黒色表皮腫、レーザー・トレラ徴候、皮膚筋炎など)。 これは比較的まれですが、見逃してはならない重要なサインです。
強いかゆみ、皮膚の乾燥、むくみ、特殊な発疹(穿孔性皮膚症など)が現れることがあります。
感染症にかかりやすくなるほか、足の壊疽、特有の皮膚症状(糖尿病性水疱、浮腫性硬化症など)が出ることがあります。
皮膚の乾燥、脱毛、むくみ、かゆみなどを伴うことがあります。
ビタミンやミネラルの欠乏、あるいは過度のダイエットなどが原因で、特殊な発疹(ペラグラ、色素性痒疹など)が出ることがあります。
最も頻度の高い原因の一つです。 処方薬、市販薬、漢方薬、サプリメントなど、あらゆるものが原因となりえます。飲み始めて数日から数週間後に出ることが多いですが、もっと時間が経ってから出ることもあります。 発熱や全身症状を伴う重症型(スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群など)もあるため、注意が必要です。
特定の皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、乾癬など)になりやすい体質。
十分な検査を行っても、明確な原因が特定できない場合もあります。 しかし、その場合でも、症状をコントロールするための治療法は存在します(例:慢性特発性蕁麻疹)。
皮膚への直接的な影響だけでなく、体の中の問題が皮膚に現れることもあります。
刺激物、アレルゲン、感染、環境など
免疫、内臓疾患、薬剤、遺伝など
このように、発疹の原因は多岐にわたり、時に複数の要因が関与します。 だからこそ、詳細な問診(いつ、どのように発疹が出現し変化したか、最近変わったことはないかなど)と、専門医による診察、そして適切な検査が、原因を特定するために不可欠なのです。 特に、皮膚は内臓の健康状態を反映する「鏡」であり、皮膚科医は発疹を手がかりに、時に内科的な病気を最初に疑うきっかけを作る重要な役割を担っています。
「原因不明の発疹」の治療は、まず診断を確定することが最優先ですが、診断を進めながら、あるいは診断がついた後に、症状を和らげる治療と原因に対する治療を組み合わせて行います。
かゆみ、赤み、痛み、腫れなど、患者様が最もつらいと感じる症状を軽減することを目指します。 これにより、生活の質(QOL)を改善します。
診断に基づいて、発疹の原因そのものを取り除く、あるいはコントロールすることを目指します。 感染症なら原因菌・ウイルスを退治する、アレルギーなら原因物質を避ける、薬疹なら原因薬剤を中止する、内臓疾患ならその治療を行う、といった具合です。 原因を取り除くことが、根治や再発予防に繋がります。
原因や重症度に応じて、以下のような治療法を単独または組み合わせて用います。
炎症を抑える最も基本的な薬です。 強さの種類が多く、部位や重症度に応じて使い分けます。
比較的軽い炎症に使われます。
アトピー性皮膚炎などで、ステロイドの代替または併用として使われます。 顔や首など皮膚の薄い部位にも使いやすいのが特徴です。
皮膚のバリア機能を回復・維持するために非常に重要です。 乾燥を防ぎ、外部からの刺激を受けにくくします。
感染が原因の場合、あるいは二次感染を防ぐために使います。
かゆみを抑えるために広く使われます。 蕁麻疹にも有効です。
症状が重い場合や、全身性の炎症を抑える必要がある場合(重症薬疹、膠原病など)に短期間使用することがあります。
難治性のアトピー性皮膚炎、乾癬、自己免疫性水疱症、膠原病などで、ステロイドだけではコントロールできない場合に使われます(例:シクロスポリン、メトトレキサートなど)。
全身性の感染症や、外用薬だけでは不十分な場合に用います。
近年開発が進んでいる新しいタイプの薬で、免疫系の特定の分子を標的とします。 中等症〜重症の乾癬、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、そして難治性の結節性痒疹などに対して、高い効果が期待されます。 特定の炎症を引き起こす物質だけを狙い撃ちするため、従来の免疫抑制薬に比べて副作用が少ない場合もあります。 (例:デュピルマブ(デュピクセント®)、ネモリズマブ(ミチーガ®)など)
特定の波長の紫外線を照射することで、皮膚の炎症や過剰な免疫反応を抑えます。 乾癬、アトピー性皮膚炎、尋常性白斑、掌蹠膿疱症などに用いられます。当院でもエキシマライトによる治療が可能です。
炎症が治まった後の赤み(炎症後紅斑)や、酒さなどによる毛細血管拡張の治療に有効です。
薬疹が疑われる場合、原因薬剤を特定し中止することが最も重要です。
接触皮膚炎や食物アレルギーの場合、原因物質を特定し避けることが基本です。
内臓疾患や膠原病などが原因の場合、皮膚科と関連する専門科(内科、リウマチ科など)が連携して、その病気自体の治療を行います。
アトピー性皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、そして以前は治療が難しかった結節性痒疹など、様々な炎症性皮膚疾患に対して、より効果的でターゲットを絞った治療薬が次々と登場しています。 これにより、難治だった患者さんのQOLが大きく改善するケースが増えています。
皮膚に存在する膨大な数の細菌や真菌のバランス(マイクロバイオーム)が、アトピー性皮膚炎、ニキビ、酒さなどの発症や悪化に関与していることが分かってきました。 将来的には、このバランスを整えることによる新しい治療法(プロバイオティクス外用など)が期待されています。
皮膚症状から内臓の病気(特にがん)を早期に発見しようという研究(デルマドローム研究)が続けられており、新たな皮膚所見と内臓疾患との関連性が報告されています。 これにより、皮膚科医が全身の健康を守る「見張り役」としての役割がますます重要になっています。
治療法の選択は、正確な診断に基づいて、患者様一人ひとりの状態、ライフスタイル、希望などを考慮しながら、医師と相談して決定していくことが大切です。
原因不明の発疹の治療中は、医師の指示に従うことが最も重要ですが、日常生活で以下の点に気をつけることで、症状の悪化を防いだり、再発を予防したりする助けになります。
皮膚をゴシゴシ擦らず、低刺激性の石鹸や洗浄剤をよく泡立てて、手で優しく洗いましょう。 熱いお湯は皮脂を取りすぎて乾燥を招くため、ぬるま湯を使います。
洗浄後は、柔らかいタオルで軽く押さえるように水分を拭き取り、すぐに保湿剤(処方されたもの、または無香料・低刺激性のもの)を塗りましょう。 皮膚のバリア機能を保つことが、外部刺激から肌を守る基本です。
ストレスは、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、乾癬など、多くの皮膚疾患を悪化させることが知られています。 十分な睡眠、適度な運動、趣味を楽しむ時間など、自分に合った方法でストレスを溜めない工夫をしましょう。
キャンプ、ハイキング、農作業など野外活動の際は、長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を避けましょう。 虫除け剤(ディートやイカリジン含有のもの)を適切に使用し、特にマダニが多い場所(草むら、藪など)への立ち入りは注意が必要です。
屋外活動後は、体(特に脇の下、足の付け根、膝の裏、頭部など)にマダニが付着していないか確認しましょう。
ウルシなどの植物に触れないように気をつけ、もし触れた場合はすぐに石鹸でよく洗い流しましょう。
日光(紫外線)が悪化因子となる皮膚疾患(例:日光過敏症、全身性エリテマトーデス)や、光線過敏を起こしやすい薬剤を服用している場合は、日焼け止め、帽子、長袖などで紫外線対策をしっかり行いましょう。
これらのポイントは、あくまで一般的な注意点です。 ご自身の症状や診断に合わせて、医師から個別の指導を受けてください。
皮膚科専門医による詳細な診察と検査で多くの場合、原因や病態が明らかになりますが、現代医学でも全ての原因が解明できるわけではありません。 しかし、原因が特定できなくても、症状をコントロールするための適切な治療法を見つけることは可能です。 診断がつかなくても、治療によって症状が改善することは多くありますので、諦めずにご相談ください。
発疹の原因によります。 細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などが原因の感染症(例:とびひ、水ぼうそう、水虫、疥癬など)であれば、うつる可能性があります。 一方で、アレルギー(接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹)、自己免疫疾患(膠原病、天疱瘡など)、薬疹、内臓疾患に伴う発疹などは、人にうつることはありません。 診察時に感染性の有無について必ず説明しますので、ご安心ください。
一部の軽い発疹(例:軽い虫刺され、一過性の軽いかぶれ)は自然に治ることもありますが、原因不明の発疹の多くは診断と適切な治療が必要です。 特に、症状が長引く、範囲が広がる、強いかゆみや痛みを伴う、水ぶくれができる、発熱など他の症状がある場合は、自己判断せず早めに皮膚科を受診してください。市販薬で一時的に症状が和らいでも、原因が解決していなかったり、診断が遅れたり、不適切な薬でかえって悪化したりする可能性もあります。
症状や経過によります。 視診と問診だけで診断がつく場合もあれば、血液検査、パッチテスト、皮膚生検などの結果を待つ必要がある場合もあります。 皮膚生検の結果には通常1~2週間程度かかります。 原因が複雑な場合は、診断までに複数回の受診や追加検査が必要になることもあります。 焦らず、医師と一緒に原因を探っていきましょう。
ストレスが発疹の直接的な「原因」となることは稀ですが、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、乾癬、円形脱毛症など、多くの皮膚疾患の「悪化因子」となることはよく知られています。ストレスがかかると、免疫系のバランスが崩れたり、かゆみを感じやすくなったり、無意識に掻いてしまったりすることがあります。 日常生活でのストレス管理も、皮膚の健康を保つ上で大切な要素の一つです。
はい、新潟の豊かな自然環境を楽しむ際には、いくつか注意すべき皮膚トラブルがあります。
これらのリスクを理解し、適切な予防策(服装、虫除け、知識)をとることが大切です。 もし野外活動後に原因不明の発疹が出た場合は、いつ、どこで、何をしていたかを医師に伝えることが診断の助けになります。
「原因不明の発疹」は、軽い皮膚トラブルから、アレルギー、感染症、さらには内臓の病気まで、実に様々な原因によって引き起こされます。 症状が長引いたり、悪化したり、原因がわからず不安を感じたりしている方もいらっしゃるでしょう。
皮膚は「内臓の鏡」とも言われるように、時に体からの重要なサインを発しています。 そのサインを正確に読み解き、適切な診断を下すことが、効果的な治療への第一歩であり、場合によっては隠れた病気の早期発見にも繋がります。 自己判断や市販薬での対処は、かえって症状を悪化させたり、診断を遅らせたりする可能性もあります。
当院では、皮膚科専門医が、詳細な問診と丁寧な診察に基づき、必要な検査(アレルギー検査、感染症検査、血液検査、皮膚生検など)を適切に選択し、原因究明に努めます。 診断後は、最新の知見も踏まえつつ、患者様一人ひとりの状態やライフスタイルに合わせた最適な治療法(外用薬、内服薬、光線療法、生物学的製剤など)をご提案いたします。 地域に根差したクリニックとして、皆様の皮膚の健康を守るお手伝いができれば幸いです。原因がわからない発疹でお困りの方は、どうぞお気軽に当院にご相談ください。
一緒に原因を探り、最適な治療法を見つけていきましょう。
発疹の見た目は似ていても、原因や治療法が全く異なる病気はたくさんあります。 自己判断は禁物です。 以下は、原因不明の発疹として現れることがある病気の一部です。 皮膚科専門医は、これらの可能性を考慮しながら診断を進めます。
・アトピー性皮膚炎
強いかゆみ、乾燥、繰り返す湿疹、肘・膝裏などに好発
・接触皮膚炎(かぶれ)
原因物質に触れた部位に一致した赤み・かゆみ・水ぶくれ
・脂漏性皮膚炎
頭皮、顔(眉間、鼻周り)などのフケ、赤み
・蕁麻疹(じんましん)
蚊に刺されたような膨疹(盛り上がり)、強いかゆみ、短時間で消退
・乾癬(かんせん)
赤い盛り上がりに銀白色の鱗屑(フケ)、肘・膝・頭などに好発
・薬疹
薬剤開始後に生じる様々な形態の発疹、時に発熱を伴う
・虫刺され反応
虫に刺された部位の赤み・腫れ・かゆみ、時に水ぶくれ
・ 疥癬(かいせん)
夜間に強いかゆみ、指間・手首・陰部などに小さい丘疹・線状疹
・皮膚真菌症(水虫、たむし等)
特定の部位(足、股、体)の輪状の赤み、かゆみ、鱗屑
・ウイルス性発疹
発熱に伴う全身性の発疹(麻疹、風疹、水痘など)
・ヘルペス感染症(単純・帯状疱疹)
片側性の痛みを伴う小水疱の集簇
・多形紅斑
ターゲット(標的)状の紅斑
・ 結節性紅斑
下腿(すね)に多い痛みを伴う赤いしこり
・皮膚血管炎
主に下腿の紫斑(内出血)、時に潰瘍
・全身性エリテマトーデス(SLE)
顔面の蝶形紅斑、日光過敏、関節痛など
・皮膚筋炎
まぶたの腫れぼったい赤み(ヘリオトロープ疹)、手指の丘疹
・類天疱瘡(るいてんぽうそう)
高齢者に多い、緊満した水疱、強いかゆみ
・天疱瘡(てんぽうそう)
弛緩性の破れやすい水疱、びらん
・ 皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉症等)
難治性の湿疹様病変、時に紅皮症、腫瘤形成
・ 酒さ(しゅさ)
顔面の持続する赤み、ニキビ様のぶつぶつ、毛細血管拡張
このリストは一部であり、他にも多くの皮膚疾患が存在します。 正確な診断のためには、皮膚科専門医の診察が不可欠です。